「コガタスジシマドジョウ」という魚がいます。ドジョウ科シマドジョウ属の一種で、5つの亜種が知られており、いずれも小さくてかわいい魚たちです。
その亜種のうち、トウカイコガタスジシマドジョウの特徴や飼育について、まとめました。
愛すべき「コガタスジシマドジョウ」たち
コガタスジシマドジョウはドジョウ科・シマドジョウ属の一種。東は静岡県から、西は広島県にまで分布する日本固有種(その地域にのみすむ種)の淡水魚です。
昔はみな「スジシマドジョウ」だった
従来、体側に縦帯が入るシマドジョウの仲間は「スジシマドジョウ」とひとくくりにされてきましたが、その後7つのグループ(大型、ビワ小型、淀小型、小型、東海小型、点小型、および中型)に分けられるようになりました。
オオガタスジシマドジョウ(旧スジシマドジョウ大型種)(撮影:椎名まさと)それらは独自の分布域をもちつつ、分布域が重なる地域においても交雑個体はほとんど見られず、3つの異なる種に大別できるとされました(Saitoh and Aizawa,1987)が、その段階では種ないし亜種の命名は行われず、命名の問題は残されていました。
それから25年後の2012年にようやく新種記載・新亜種記載が行われ、さらに新しい種のスジシマドジョウ類が記載されるなどしました。現在は11の種ないし亜種が知られています。
コガタスジシマドジョウの5つの亜種
実は、トウカイコガタスジシマドジョウという「種」の魚は存在せず、コガタスジシマドジョウの亜種のひとつになります。
コガタスジシマドジョウには合計5つの亜種が知られており、山陽地方にすむサンヨウコガタスジシマドジョウ、山陰地方に見られるサンインコガタスジシマドジョウ、琵琶湖にすむビワコガタスジシマドジョウ、淀川水系にすむヨドコガタスジシマドジョウ、そしてもう1種は東海地方に生息するトウカイコガタスジシマドジョウです。
ただし、残念ながらこれらの5亜種のうち、「ヨドコガタスジシマドジョウ」という種はもう採集どころか、会うこともできません。というのも、すでに滅びてしまったと考えられているからです。
コガタスジシマドジョウ5亜種の中では、トウカイコガタスジシマドジョウが一番出会いやすいといえるでしょう。というのも、東海地方、とくに岐阜県では水田や用水路が状態よく残っているところも多いためか、生息している場所も個体数もまだまだ多いからです。
トウカイコガタスジシマドジョウの特徴
トウカイコガタスジシマドジョウCobitis minamorii tokaiensis Nakajima, 2012はその存在は古くから知られていたようです。
一方、1981年になり詳細な報告がようやくなされ、その後「スジシマドジョウ小型種東海型」と称されましたが、ほかのスジシマドジョウ小型種とされたものとともに、2012年にようやく学名と標準和名がつきました。
タイプ産地は三重県、津市近郊の河川です。
トウカイコガタスジシマドジョウのオス(撮影:椎名まさと)なお、学名のうち種名の「minamorii」とは日本産のシマドジョウ属を研究した皆森寿美夫博士にちなむものとされ、亜種名「tokaiensis」は東海地方産であることをあらわします。
トウカイコガタスジシマドジョウのメス(提供:PhotoAC)コガタシマドジョウの5亜種はいずれもよく似ており、同定には斑紋を見る必要があります。
シマドジョウ属の斑紋列(提供:椎名まさと)トウカイコガタスジシマドジョウは体側のL5と呼ばれる斑紋が非常に大きく、楕円形から長方形ないし正方形に近い形をしています。
また繁殖期の雄はL2とL4が消失し、L5が縦帯を形成するようになります。尾鰭の模様はやや乱れた3~4列の横帯で、後縁は黒くはなりません。
基本的な斑紋は上記の写真の通りですが、時たま変わった模様の個体が出現することがあります。
ちょっと変わった模様のオス(撮影:椎名まさと)この個体は上記の雌雄と同じ場所で採集したものなのですが、L1とL3がつながっているように見えるユニークな個体です。
トウカイコガタスジシマドジョウは雌雄ともに斑紋の変異が大きいようです。フィールドで気に入った模様のものを見つけて持ち帰ってみましょう。
トウカイコガタスジシマドジョウとの出会い
筆者はコガタスジシマドジョウが一切生息していない福岡県や愛媛県に居住していた期間が長く、なかなかコガタスジシマドジョウを採集することができていませんでした。
しかし2009年の秋にはじめて岐阜県を訪れ、そこで初めて採集することができました。
2009年に初めて採集したトウカイコガタスジシマドジョウ(撮影:椎名まさと)生息していたのは水深30センチほどのごく浅い用水路。水路には柔らかい泥が堆積しており、お世辞にもきれいな環境とはいえません。
そんな場所でもミナミメダカなどの魚の姿が見えたので、網で泥ごと掬うと、その網の中にくねくね泳ぐ姿を発見。
トウカイコガタスジシマドジョウを採集したところで見られたミナミメダカ(撮影:椎名まさと)これが私とトウカイコガタスジシマドジョウとの初対面であり、種としてのコガタスジシマドジョウとの初対面でもあります。
シマドジョウ属の魚はこれまでヤマトシマドジョウ種群およびアリアケスジシマドジョウしか採集してこなかった筆者にとって、これほど細かくてかわいいサイズのシマドジョウ属魚類が網に入ったときは心踊らされました。
網に入ったトウカイコガタスジシマドジョウ(別の日に撮影/撮影:椎名まさと)その後も、この場所を2010年、2017年、2018年、2019年と訪問し、いずれもトウカイコガタスジシマドジョウの元気な姿を拝むことができました。
その個体数は多く、成魚から幼魚まで数多く見られ、健全な生息環境が維持されていることが伺えます。このほか近隣の河川や、岐阜市の市街地を流れる小川なども訪れましたが、それらの場所においても普通に見ることができました。
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