Nippon Foundation-Nekton Ocean Census(Ocean Census)は3月9日、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)と共同で行った深海調査の成果を発表しました。
この調査は2025年6月に南海トラフと伊豆-小笠原諸島海域の七曜海山列を対象に実施され、多くの未記載種と未記載種の可能性が高い深海生物が発見されています。
発見された多毛類(提供:Naoto Jimi – The Nippon Foundation-Nekton Ocean Census/©JAMSTEC)海は未記載種だらけ?
海は地球の表面積の7割以上を占めており、ここでは多種多様な海洋生物たちが暮らしています。
しかし、海洋生物について未だ全貌は明らかにされておらず、今の時点で記載されている海洋生物24万種に対し、実際の種数は数百万種と推定されています。
そうした背景から、2023年に海洋生物の発見を加速するため、日本財団とNekton財団による「Ocean Census」プロジェクトが始動しました。
未解明な部分が多い深海
深海は海洋の中でも未解明な部分が多く、“地球最後のフロンティア”とも呼ばれています。
四方を海で囲まれた日本は高い海洋探査技術を持つ国の1つ。しかし、そんな日本の海であっても、深海には謎が多く残っています。
今回の調査が行われたのは、その中でも生物学的な調査が進んでいない「南海トラフ」と「七曜海山列」の2つの海域です。
生物多様性が把握できていない<南海トラフ>と<七曜海山列>
巨大地震が発生する可能性が高まっている南海トラフでは、これまで地質学的な調査が多く実施されてきました。
一方、南海トラフにおける生物多様性に焦点を当てた研究は、これまでほとんど行われていません。
そのため、南海トラフの正確な生物多様性が把握できないといった課題があったといいます。
調査の様子(提供:Paul Satchell-The Nippon Foundation-Nekton Ocean Census/©JAMSTEC)また、伊豆・小笠原諸島海域にある七曜海山列は地理的に隔離されていることから、多くの固有種が生息する可能性が期待されていますが、調査がほとんど行われていない海域です。
近年では、人間活動が深海にも影響を及ぼすことが明らかになっており、絶滅危惧種に指定される深海生物も増えているといいます。
こうした背景から、JAMSTECはOcean Censusと共同で南海トラフと七曜海山列で深海調査を行いました。
深海のホットスポット
調査では、JAMSTECの深海潜水調査船支援母船「よこすか」と有人潜水調査船「しんかい6500」が用いられ、南海トラフと七曜海山列から528ロットを超える深海生物が採集されています。
南海トラフで80種もの深海生物を確認
南海トラフのような環境では特異な生物群集が成立すると考えられているものの、生物群集は十分に記録されておらず、14種しか報告されていなかったといいます。
南海トラフでの調査の様子(提供:The Nippon Foundation-Nekton Ocean Census/©JAMSTEC)しかし、今回の調査では水深600~4600メートルに分布する5つのメタン湧水域から、軟体動物33種、環形動物23種、節足動物11種、ヒモムシ5種、棘皮動物4種、刺胞動物3種、コケムシ1種の合計80種もの深海生物が確認されたとのこと。
南海トラフの生物多様性に関する論文の掲載種(提供:©Dr. Chong CHEN/JAMSTEC’)また、これまで1地点1~6種にとどまっていたところ、新たな調査では1地点あたり15~30種もの生物が確認されています。
中には日本初記録や新たな種間関係も発見されており、南海トラフが生物多様性のホットスポットであることが明らかになったのです。
七曜海山列の豊かな生態系
七曜海山列の調査では、中でも未踏の地であった、日曜海山、月曜海山、火曜海山、金曜海山が対象になりました。
七曜海山の一つ頂上付近に接近する「しんかい6500」(提供:The Nippon Foundation-Nekton Ocean Census/©JAMSTEC)これらの海域では高密度の海綿群集をはじめとした、鮮やかな生態系の存在が確認されています。また、ガラス海綿に共生する2種のゴカイをはじめ多数の種が観察・採取され、その生態も明らかにされました。
発見された多毛類(提供:Naoto Jimi – The Nippon Foundation-Nekton Ocean Census/©JAMSTEC)さらに、コシオリエビ類の新種5種、八放サンゴ、ヒモムシ類、ヨコエビ類、動吻動物、貝類など、日本近海からの初記録を含む様々な新発見があったようです。
この成果は七曜海山列などの海山生態系が重要なホットスポットであり、未知の生物多様性が潜んでいることを示すものとなりました。
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