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ジュゴンの記憶と海の祈りを描く創作能『沖縄平家物語2026』 神田楽道庵で“海と命の物語”上演【東京都千代田区】

沖縄の海から姿を消しつつあるジュゴンを題材に、海に生きる命の記憶と共生を描く創作能『沖縄平家物語2026』が6月28日、東京都千代田区の神田楽道庵で上演されます。

舞台は沖縄の海。海と命の物語を、能をはじめとしたさまざまな演出で描きます。

沖縄平家物語2026(提供:桜樹座)

平家伝説と沖縄の海が交差する物語

原作・主演・脚本をつとめるのは、パフォーマー・ヴォーカリスト・作曲家である桜井真樹子氏。本作は、壇ノ浦で滅びた平家武者の魂が沖縄の海へ流れ着いたという幻想譚を軸に展開する舞台作品です。

基地建設により環境が変化する沖縄・大浦湾で、漁を続ける一人の漁師の前に“平家蟹”となった平知盛や平教経らが現れます。彼らは、海を失う悲しみと、それでも命をつなごうとする海の生き物たちの声を語り、観客に海の記憶を問いかけます。

ジュゴン能 開催の様子(提供:桜樹座)

作中では、ジュゴンの母が海の変化を訴える場面や、遠い海へ移動したジュゴンが再会を願い続ける姿も描かれます。

歴史と幻想を交差させながら、現代の海洋環境の変化を重ね合わせることで、過去と現在を往還する物語を展開。漁師と平家の魂、そしてジュゴンや珊瑚礁、藻場といった海に生きる命たちの記憶を描き出します。

太平洋を横断する「海の物語」

海洋文化圏に共通する「海への畏敬」を表現するため、能・語り・歌・舞踊を基盤に、琉球文化やハワイ・マオリの祈りの要素を取り入れている点も特徴です。

前幕では、ニュージーランドの先住民族・マオリの伝統戦舞である「カ・マテ」(Ka Mate)を導入します。

カ・マテは「私は死ぬのか、私は生きるのか」という死と生の境を強く歌い上げるもので、極限状況における「生への意志」を体現。平家武将の最期と生命の力強さを重ねて表現します。

800年前に海に沈んだ平家の魂が、沖縄の海を経て、遠い太平洋の島嶼文化と響き合う──という本作の大きなテーマを体現する重要な役割を担うシーンです。

マオリの彫刻(提供:PhotoAC)

さらに、このカ・マテが入ることで、太平洋圏の横断的な物語となるように構成。伝統を踏まえつつ、新たな解釈で現代の観客に届けることを目指しているといいます。

一方で後幕では、静かな喪失と再生の希望対比的に描き出します。

激しい「カ・マテ」からハワイを代表する優しい別れの歌「Aloha ʻOe」へと繋げることで、太平洋に広がる海洋文化の連続性を身体表現として提示する試みとなっています。

芸能と科学の融合も必見

能の前幕と後幕の間には、アイ(間)狂言という前場の物語や設定を解説する狂言が挟まれます。

本演目においては、京都大学フィールド科学教育センター・市川光太郎氏がこの役をつとめ、「ジュゴンの生態研究」を題材にしたアイ狂言を披露。芸能と科学が交差する独自の構成も必見です。

ジュゴン(提供:PhotoAC)

自然と人間の関係を改めて見つめ直す

本作は、単なる環境問題の提示にとどまらず、「海に生きるもの同士の記憶と共生」を主題とした鎮魂と再生の物語です。

観客に対して、海の豊かさとは何か、そして失われつつある命の声にどう向き合うかを静かに問いかける公演となりそうです。

本公演について、詳しくは桜井真樹子氏の公式ホームページ「makiko club」に掲載されています。

(サカナト編集部)

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