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江戸時代に採集された標本を調査! 新たに<マボロシテッポウエビ>を提唱&4種を新種記載

生物は、分類学的な研究により1種とされていたものが複数になったり、複数種とされていたものが1種になったりすることは珍しくありません。

例えば、テッポウエビ属の Alpheus lobidensAlpheus crassimanus は極めて同定が難しいグループとして知られています。さらに、日本近海にはこれらに分類される種の中に複数の「隠蔽種」が含まれていることも指摘されていました。

そうした中で、千葉県立中央博物館の駒井智幸研究課長らの研究グループは、Alpheus lobidens のホロタイプ(正基準標本)を詳しく調べ、分類学的な再検討を行いました。

この成果は「Zootaxa」に掲載されています(論文タイトル:Clarification of the identity of the snapping shrimp Alpheus lobidens De Haan, 1849, revalidation of A. crassimanus Heller, 1862, and descriptions of four new species from Japan previously confused with A. lobidens (Decapoda: Caridea: Alpheidae). )。

鋏を高速で閉じる<テッポウエビ>

テッポウエビ属は、鋏を高速で閉じることで破裂音と衝撃波を発生させる甲殻類です。

テッポウエビの仲間(提供:PhotoAC)

このグループは熱帯から温帯にかけて広く分布しており、様々な種が知られています。中でもイソテッポウエビは日本の磯で普通に見られるテッポウエビ属です。

シーボルトが持ち帰った標本

これまで、イソテッポウエビという和名は Alpheus lobiden という種にあてられてきました。

Alpheus lobiden は江戸時代にシーボルトと弟子のビュルゲルが日本で採集した後、オランダの動物学者 デ・ハーンが出版した「日本動物誌 甲殻類編」の中で記載された種です。

その後、インド・太平洋海域から同種とされるテッポウエビが相次いで報告されるものの、1990年代に入ると Alpheus lobiden には複数の隠蔽種の存在が指摘されるようになったといいます。

こうした背景から、Alpheus lobiden の再定義と分類学的な整理が長年の課題となっていました。

<マボロシテッポウエビ>和名を提唱

今回の研究では、オランダの「Naturalis Biodiversity Center」に所蔵されている Alpheus lobidens のホロタイプについて詳しい調査が行われています。

千葉県立中央博物館(提供:PhotoAC)

調査の結果、Alpheus lobidens はこれまで、本種に同定されてきたいずれのテッポウエビとも一致しないことが判明しました。さらに、340種を超えるテッポウエビ属の既知種とも形態的に一致する種がいないことから、「マボロシテッポウエビ」という和名が提唱されています。

さらに Alpheus lobidens のシノニム(異名)になった Alpheus crassimanus を独立した種とし再記載。Alpheus lobidens の亜種とされてきた Alpheus lobidens polynesica についても文献に基づく検討により、独立した種(Alpheus polynesicus)であることが提唱されました。

4種を新種記載

既知種について分類学的な整理をした研究グループは、形態の比較とDNA解析を組み合わせることで、これまで Alpheus lobidens と同定されてきたテッポウエビ属の新種記載も行いました。

新種として記載されたのはイソテッポウエビ Alpheus nigrofasciatusホシイソテッポウエビ Alpheus yoshigouiフトオビイソテッポウエビ Alpheus latifasciatusカワテッポウエビ Alpheus aestuaricola の4種。いずれの種も千葉県内で確認されているとのことです。

なお、ホシイソテッポウエビについては、千葉県内において館山のみから見つかっており、比較的南方の種と考えられています。

テッポウエビの多様性が判明

今回の研究によって、イソテッポウエビとされてきた Alpheus lobidens が、既知種のいずれとも一致しない種であることが判明し、マボロシテッポウエビの和名が提唱されました。

さらに、シノニムや亜種とされてきた種についても分類学的な再定義が行われたほか、Alpheus lobidens の隠蔽種についても4種が新種記載されています。

これらの成果は、テッポウエビの多様性を明らかにするとともに、形態比較とDNA解析の組み合わせの有効性を示すものとなりました。

(サカナト編集部)

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