ある子は回遊魚を追いかけながら、またある子はじっくりとカメを見つめながら、ただひたすらに、夢中で絵を描く子どもたち──。
6月中旬、愛知県碧南市にある碧南海浜水族館で「写生大会」が開催され、7月から8月にかけては入賞作品の展示が行われました。写生大会に家族で参加し、運営する水族館スタッフに話を聞いてみました。
展示された作品には一人ひとりの目を通して見た海の世界が広がっていました。
今年で40回目「碧南海浜水族館」の写生大会
「魚をよく見て描いてみよう」。
そんな時間を大切にしているのが、碧南海浜水族館で毎年開催されている写生大会です。
1985年に始まり、今年で40回目。コロナ禍による一時的な中断はあったものの復活し、今年は132人の子どもたちが参加しました。
それぞれの海を描く子どもたち
会場では、子どもたちが自分の好きな場所にレジャーシートを広げ、鉛筆、クレヨン、絵の具などの画材で絵を描いています。
写生大会は幼児から中学生まで参加可能ですが、参加者の中には思わず見入ってしまうような緻密な絵を描いている子もいました。
水槽の可愛い魚たち(撮影:清水むつみ/撮影場所:碧南海浜水族館)筆者の子どもたちはというと、年長の娘は大水槽の回遊魚をターゲットにしたようでした。
大水槽のアジとエイ(撮影:清水むつみ/撮影場所:碧南海浜水族館)まずはマダイ、そして大きなロウニンアジ、魔法の絨毯のように通り過ぎるエイ。
回遊魚は泳ぐのが速いので、娘はターゲットを追いかけてみたり、泳ぎ去ったらまた戻ってくるのを待ってみたり、工夫を重ねて描いていました。
一方、年少の息子はチンアナゴやカメなど、あまり動きのない生き物をターゲットにじっくりと描写。子どもの性格の違いがよく出るのも面白いポイントです。
ビオトープのカメ(撮影:清水むつみ/撮影場所:碧南海浜水族館)対象は違えど、二人とも普段は見せない真剣な表情で取り組み、終わった後は「またやりたい!」とのこと。親子ともども充実した一日となりました。
子どもたちを通して見る海の世界
7月18日から8月16日までの1か月間、写生大会の入賞作品が碧南海浜水族館で展示されました。
動物園水族館協会会長賞入賞作品(撮影:清水むつみ/撮影場所:碧南海浜水族館)展示会場には入賞作品がずらりと並んでいました。
緻密な作品から独創的なものまで表現は様々ですが、見ていて楽しくなる作品ばかりです。
碧南市長賞入賞作品(撮影:清水むつみ/撮影場所:碧南海浜水族館)「これはカメさんだね」「これは色がきれいだね」「かわいい!カクレクマノミかな?」と、子どもたちとの会話も盛り上がりました。
絵によって“水の色”が違う
筆者が特に印象に残ったのは、一枚一枚で“水の色”が全く違っていたことです。
水というと透明や青を想像しがちですが、絵の中の水はピンクや緑、白、オレンジなど様々な色で表現されていて驚きました。
入賞作品(撮影:清水むつみ/撮影場所:碧南海浜水族館)私たちは普段、自分の目を通してしか世界を認識することができません。でも、この展示を見ていると、子どもたちの目を通して海の世界を見ているような不思議な感覚になりました。
水族館スタッフに聞く「写生大会への思い」
大会を運営されている水族館スタッフにお話を伺ったところ、この写生大会には大切にしている思いがあるそうです。
「大会をきっかけに、水槽の魚たちをよく見て、観察してほしいんです。今この場で、自分の目で見たものを描くという経験の場となることを大切にしています」
だからこそ、入賞作を選ぶ審査でも単に本物そっくりに描けているかだけでなく、対象をよく観察したうえで、その子自身が感じた色や表現になっているかということを大切にされているそうです。
入賞作品(撮影:清水むつみ/撮影場所:碧南海浜水族館)選考には美術関係の有識者や学芸員、水族館館長が携わっており、真剣に審査をされているとのことでした。
近年は参加者が減少傾向にあるそうです。開催時期を工夫しながら、多くの子どもたちに生き物を観察する楽しさを体験してもらいたいと話していました。
そんな思いが込められた写生大会。水族館で魚を観察し、自分だけの海を描く時間は子どもたちにとって、きっと特別な思い出になることでしょう。
うちの子たちも、次はどんな海を描くのかな? 来年の参加が待ち遠しくなりました。