都市化が進み生物が暮らす環境は減少しています。中でも両生類は、生息地の分断や水辺の消失、外来魚の影響を受けやすい生き物です。
開発が進む一方、都市には人が管理してきた公園やお寺、庭園といった水域も残されてきました。特に京都には、寺院や神社の境内に池や水路といった水域が多く残っています。
しかし、こうした水域が両生類にとってどのような役割を持っているのかは、これまで十分にわかっていませんでした。
そうした中で、京都大学の大越香江氏らの研究グループは、寺社の水辺が両生類に生息環境を提供しているのか明らかにすべく、京都府にある水域を対象に調査を行いました。
この研究の成果は『Urban Ecosystems』に掲載されています(論文タイトル:Anurans in culturally managed temple and shrine waterscapes in Kyoto: integrated visual, acoustic, and environmental DNA surveys)。
都市における両生類の生息環境
カエルなどの両生類は、生息地の分断や水辺の消失、外来魚の影響を受けやすい生物です。
トノサマガエル(提供:PhotoAC)一方、これまで都市部の水辺が生物多様性を支えてる可能性は研究されてきたものの、寺社庭園のように長期的かつ歴史的・文化的に管理されてきた水景において、両生類を体系的に調査した研究は限られていました。
京都の寺社に残された水辺を調査
京都の寺院や神社では、庭園・境内に多くの池や水路が残されているといいます。
こうした水辺は文化財として管理されてきた一方、都市部の両生類にとってどのような役割を持っているのかは、十分に調べられていませんでした。
文化的価値を守ることと、生き物の生息場所としての機能の両立は、都市生態学と文化的景観の管理をつなぐ課題とされています。
そうした中で、研究グループは京都の寺社にある水域を「生物文化的な水景」と捉え、こられらが両生類に生息環境を提供しているのか調査しました。
カエル7種とアカハライモリを確認
調査の対象となったのは、京都市東山地域になる寺社や寺社に関連する31施設80水域です。
現地では、卵、幼生、成体を確認する目視調査と鳴き声調査に加え、43水域では環境DNA解析も実施されました。
タゴガエル(提供:PhotoAC)こうした複数の手法を調査によって研究グループは、ツチガエル、モリアオガエル、タゴガエル、トノサマガエル、ヒガシニホンアマガエル、ウシガエル、ニホンヒキガエルのカエル類7種とアカハライモリを確認。
この中には環境DNAのみで検出された種もいれば、現地調査のみで確認された種、その両方で検出された種もおり、両手法が互いを補うことが示されています。
寺社の水景も両生類の小さな生息場所
今回の研究によって、寺社にある水辺など長い期間人が管理してきた水域も、両生類にとって重要な生息環境となっていることが明らかになりました。
一方、この研究は調査対象が限られた地域であること、施設ごとに事情が異なり、調査可能な時期・水域・回数が揃っていないこと、環境DNAでは個体数や繁殖の有無を確認できないことから、限界があるとのこと。
今後、研究グループはより多くの地域や水域を対象にした継続的な調査で、種ごとの環境と関連をさらに検討する必要があるとし、文化的価値と生態学的価値を両立した水辺管理の検討の手がかりになることが期待されています。
(サカナト編集部)