伊豆諸島の伝統的な発酵食品である「くさや」。
くさやを製造する上で欠かせない「くさや汁」には、「くさや菌」をはじめてとした微生物が暮らしています。さらに、微生物は抗生物質を生産し、くさや汁に抗菌作用をもたらしていることも示唆されています。
今回、東京農業大学の鈴木敏弘准教授らの研究グループは、八丈島の「くさや」から分離したTUA-HK1GM株について、分類学的な特徴と抗菌物質生産能を解析しました。
この研究成果は「The Journal of Antibiotics」に掲載されています(論文タイトル:Salt-induced 7-deoxypactamycin and oligomycin production in Streptomyces sp. strain TUA-HK1GM isolated from kusaya gravy)。
くさや汁に含まれる抗菌物質
くさやは伊豆諸島の伝統的な発酵食品。クサヤモロなどの魚を原料とし、独特の匂いを持つことが特徴です。
くさや(提供:PhotoAC)そんなくさやの製造に欠かせないのがくさや汁です。
くさや汁は高い塩分の濃度と、魚に由来した成分を豊富に含む独特な発酵環境として知られており、古くから抗菌作用を持つことが指摘されてきました。
近年の研究では、くさや汁が科学的に抗菌物質を含むこと、くさや汁の中の微生物が抗菌物質を生産することが明らかになっています。
新種の放線菌が見つかる?
今回、研究の対象になった「TUA-HK1GM株」は、近縁種と比較して、より高濃度の食塩存在下でも生育できる特徴を示すといいます。
また、ゲノム解析などによりTUA-HK1GM株は新種の放線菌(Streptomyces sp. TUA-HK1GM)の可能性が高いことが明らかになっています。
食塩に依存し抗菌物質を生産
さらに研究では、Streptomyces sp. TUA-HK1GM が、食塩(NaCl)を含まない培地において、主に抗真菌活性を示す「OligimycinA」と「OligimycinB」を生産することが判明しています。
一方、食塩を含む培地では、抗黄色ブドウ球菌・抗腫瘍活性を示す「7-deoxypactamycin」が生産されることを確認。食塩の暴露時間が長いほど、7-deoxypactamycinの生産量は最大で11倍、Oligimycin Aの生産量は最大で32倍に増強されることが明らかになったのです。
これらの結果から、くさや汁に暮らす微生物が、食塩をきっかけに二次代謝を活性化し、抗菌物質の生産を高めている可能性が示されてました。
新規の抗生物質の探索にも貢献
今回の研究によって、くさや汁から分離されたTUA-HK1GM株が新種の放線菌の可能性が高いこと、本菌株が食塩に依存し抗菌物質を生産することが明らかになりました。
この成果は、通常の培地では発現しにくい抗菌物質の生産を食塩の添加により引き出せる可能性を示しており、今後の新規抗生物質探索などに貢献することが期待されています。
(サカナト編集部)