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SPSとLPS

アワサンゴ(ミドリイシ科) 。ポリプの大きなイシサンゴ(LPS)。(撮影:椎名まさと)

SPS」とは小さなポリプのイシサンゴを意味する Small polyp stony coral、一方「LPS」は大きなポリプのイシサンゴを意味する Large polyp stony coral の略です。基本的にはこれらは六放サンゴのポリプの大きさで分けられる分類であり、これもリンネ式の分類とは関係ありません

ミドリイシ属の一種(ミドリイシ科)。ポリプの小さなイシサンゴ(SPS)。(撮影:椎名まさと)

例えばアワサンゴなどはポリプが大きくLPSとされているのですが、同じ科のミドリイシなどはポリプが非常に小さくSPSとされています。

養殖用土台についたハナガササンゴの一種(撮影:椎名まさと)

基本的には綺麗な水、強い照明、安定した環境、様々な成分の含まれた海水が必要なSPSのほうが飼育が難しく、LPSのほうが飼育しやすいとされますが、中にはLPSでも飼育しにくいものがいます。

LPSの代表的なサンゴであるハナガササンゴなどは昔から飼育されてきたサンゴですが、その割には最近まで長期飼育する方法がよく分かっていなかったこともあり、飼育も難しいとされています。

好日性と陰日性

好日性サンゴのミドリイシ(撮影:椎名まさと)

好日性というのは体内に褐虫藻を共生させ、褐虫藻に光合成を行わせ、そのエネルギーで生きていくタイプ。もう一方の陰日性というのは、光合成させず、みずから餌をとるタイプです。

陰日性サンゴのイボヤギの仲間(キサンゴ科)(撮影:椎名まさと)

好日性のサンゴの多くも少しは餌を捕食していますが、陰日性は餌に依存しているという点で異なります。

好日性のサンゴ飼育には強い照明が不可欠(撮影:椎名まさと)

これも基本的にはアクアリスト独自の分類手法になります。好日性はメタルハライドランプやハイパワーなLEDライトが必要になりますが、陰日性サンゴは照明は不要で、逆に強い光を当てれば弱ってしまうこともあります。

照明がなくても問題ないのなら飼育は簡単、と思ってしまいがちですが、実際は細かい餌を水流に流すように、しかも頻繁に給餌しなければならず、素人が手を出しても飼えるサンゴではありません。基本的には餌を与えることで飼育水を汚してしまうことが多いので、陰日性サンゴは陰日性サンゴ同士、好日性は好日性サンゴ同士で飼育することが基本になります。

陰日性サンゴは深場や、オーバーハングした岩陰などにも見られ、低い光量でも生きていけるようになっています。

「ウィスカーズ」ことダンカンコーラル(キサンゴ科)。好日性とされる(撮影:椎名まさと)

陰日性のイシサンゴについてはイボヤギなどキサンゴ科のサンゴが多いのですが、同じ科に含まれる「ウィスカーズ」ことダンカンコーラルは好日性サンゴで光合成をおこないます。

このほか、同じキサンゴ科のスリバチサンゴなども照明だけで飼育できます。これらはリンネ式の分類と好日性・陰日性は全く関係がない、ということを示す例ともいえます。

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椎名まさと

魚類の採集も飼育も食することも大好きな30代。関東地方に居住していますが過去様々な場所に居住。特に好きな魚はウツボ科、カエルウオ族、ハゼ科、スズメダイ科、テンジクダイ科、ナマズ類。研究テーマは魚類耳石と底曳網漁業。

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