ニュウドウカジカの顔
ニュウドウカジカの顔で特徴的なのは両眼間隔の垂れ下がった鼻のようなものですが、これは陸上にあげてからしか見られません。というのもニュウドウカジカの皮膚は柔軟であり、陸上に揚げられたことで皮膚がたるんでしまったものとされます。
ニュウドウカジカは2013年まではさほど注目されている種ではありませんでしたが、この年には英国「醜い生物保存協会」のマスコットキャラクターとなり、知名度がアップしたのでした。
この際に使用された写真も、大きな鼻が特徴ですが、両眼感覚の柔軟な皮膚が垂れてしまったようです。
しかしながらこの際に紹介された「ブロブフィッシュ」という魚は付記された学名(Psychrolutes marcidus)や産地(オーストラリアやニュージーランド)を見るとニュウドウカジカではなく、別種のホテイカジカであるように思われます。しかしこの種は日本には生息しておらず、日本に生息するニュウドウカジカと混同してしまったようです。
ホテイカジカはニュウドウカジカ同様、ウラナイカジカ属の魚ではありますが、オーストラリアやニュージーランドの海域に生息する魚で、ニュウドウカジカでは頭部に多数の皮弁があるのに対し、ホテイカジカではほとんどないとされています。
なお、ウラナイカジカ科の魚は太平洋・大西洋・インド洋にひろく分布しています。チリ・アルゼンチンのパタゴニアに生息する種に「パタゴニアホテイウオ」なる和名を有する種がいますが、ホテイウオ(ダンゴウオ科)との関係はありません。
ニュウドウカジカは食べられる?
このように独特の顔が特徴のニュウドウカジカではありますが、食用にもなります。そして意外と美味しい魚でもあります。
筆者はこれまでに2回ほどニュウドウカジカを入手しており、これを揚げ物にして食べたところ、極めて美味でした。胃や肝も茹でて食べたのですが、これも非常に美味しいものでした。
しかしながら「北海道の魚類 全種図鑑」などでは、残念なことに「ほとんど利用されていない」などと記述されています。
本種が多く漁獲される底曳網漁業は海底の環境や生物に大きな負荷がかかる漁法であるため、漁期の制限や、網の目の大きさの制限などがありますが、それでも利用されない魚が大量に海に投棄されるのは見るに堪えないところです。そして底曳網で漁獲された魚は、海にもどされても多くが海底に辿りつけても弱って死んでしまうのです。
であれば利用されない魚であっても、死んでしまうのであれば持ち帰って市場で販売するのがベストではないかと思います。