メバルの仲間(スズキ目メバル科)
宇和海沿岸では4月~5月ごろにメバル種群の幼魚が獲れることがあります。アカメバル(学名 Sebastes inermis)と思われる個体が多く見られたほか、シロメバルのような個体もいました。
また同じメバル属であると思われるものの、メバル種群とは明らかに異なるもの(ソイ類?)も同時期のモジャコ漁で採集されています。
ブリ(スズキ目アジ科)
ブリ(学名 Seriola quinqueradiata)の稚魚は「モジャコ」とも呼ばれ、流れ藻についています。これをモジャコ漁で採捕して養殖の種苗にします。
ブリは成魚は黄色い縦帯が入りますが、幼魚には横帯が出ておりブリモドキに似ています。この横帯は成長すると消えてしまいます。
ブリ属の幼魚は第1背鰭に鰭膜がありますが、ブリモドキでは第1背鰭に鰭膜がないので見分けることができます。
シイラ(スズキ目シイラ科)
全長1.5メートルに達する大型魚であるシイラ(学名 Coryphaena hippurus)も流れ藻の住人で、秋になると全長3~5センチくらいのかわいい幼魚が流れ藻についているのを見ることができます。
また、シイラは成魚も浮遊するものにつき、餌場にしているようです。幼魚・成魚ともに流れ藻をうまく利用している魚といえそうです。
この習性をうまく利用した漁法が「シイラ漬け漁法」です。
マツダイ(スズキ目マツダイ科)
マツダイ(学名 Lobotes surinamensis)も流れ藻についていることが多い魚です。
流れ藻だけでなく、流木やブイなどにもついています。海の表面に体を倒して漂う様子は枯れ葉のようにも見えます。
ただ成長するとやや深い海へと移動してしまいます。成魚は全長60センチに達し、食用になります。
メジナ・イスズミ (スズキ目メジナ科・イスズミ科)
磯釣りのターゲットとして知られるメジナ科のメジナ(学名 Girella punctata)も幼魚のうちは流れ藻についていることが多いです。
しかしながらその姿は、わたしたちのよく知るメジナと大きくことなり、スレンダーな体でかつ体側にはキビナゴのような銀色の縦帯が入っています。
このほか、メジナ科と近縁とされるイスズミ科の魚も、幼魚は流れ藻や浮遊物についていることが多くしばしば網に入りますが、全身が灰色~黒色で白い斑点があるという共通点があり、同定は難しいです。
イシダイ・イシガキダイ(スズキ目イシダイ科)
イシダイ科のイシダイ(学名 Oplegnathus fasciatus)およびイシガキダイ(学名 Oplegnathus punctatus)の稚魚も流れ藻やそのほか浮遊物についていることが多い魚です。
全長5センチくらいまでは流れ藻で見られますが、それより大きく育つと流れ藻を離れ磯でくらすようになります(ただしイシガキダイはある程度大きい個体でも浮遊物につく傾向があるよう)。
高知県の海では稚魚は流れ藻に乗ってやってきた体長3センチ程の幼魚が5~7月に採集されました。日本海の九州北岸でも同じ時期に採集しています。
オヤビッチャ(スズキ目スズメダイ科)
スズメダイ科のオヤビッチャ(学名 Abudefduf vaigiensis)も流れ藻とともに、広い範囲に出現します。以前は「千葉県以南の各地」に出現するとされましたが、実際には北海道以南の各地で幼魚が出現します。
もちろん北海道や東北地方では冬の水温低下に耐えることができず死んでしまう、いわゆる死滅回遊魚です。
ニジギンポ(スズキ目イソギンポ科)
イソギンポ科のニジギンポ(学名 Petroscirtes breviceps)も流れ藻についていることが多い魚です。
流れ藻だけでなく、防波堤に係留されているブイなどにも見られ、7~9月には本州中部以南の太平洋岸で小さなニジギンポを多数見ることができます。
このほかイソギンポやタテガミギンポといった種類も浮遊物についていることがありますが、ニジギンポほど多くは見られません。
ニジギンポは襟裳岬から琉球列島、小笠原諸島までの広い範囲に見られ、磯採集でも出会えますが、下顎には大きな犬歯があり、咬まれると怪我をすることもあるため注意が必要です。