キサゴ属は日本の広い範囲に分布する貝類でありながら、馴染みのないという人が多いと思います。
実は日本では古くからキサゴ属を利用しており、特にイボキサゴのだしは日本最古の調味料ともいわれています。
イボキサゴとは
イボキサゴはニシキウズガイ科キサゴ属に分類される巻貝の1種。キサゴ属の貝類には本種の他にダンベイキサゴやキサゴが知られています。
特にダンベイキサゴは最大で殻径4センチ前後にまでなり、「ナガラミ」という名で流通。一部に地域では食用として利用されています。
一方、イボキサゴの大きさは2センチ程度とやや小型の貝です。現代の日本では利用されていないものの、縄文時代から戦前にわたり大量に消費されてきたといいいます。
また、本種は貝殻の色彩のバリエーションに富むことも特徴。明治時代にはイボキサゴの貝殻をおはじきとして利用したそうです。
イボキサゴ利用の歴史
日本のイボキサゴ利用の歴史は古く、あゆみ野から発見されている縄文時代中期~後期の貝塚からは大量の貝殻が発見されいます。貝の組成はイボキサゴをはじめ、ハマグリやシオフキ、アサリなど現代も食用としている貝類が中心。中にはイボキサゴが9割を占める貝塚もありました。
その後、地域によってイボキサゴの比率は異なるものの、弥生時代~中世の遺跡からは多くのイボキサゴが発見されており、長い間本種が食用とされていたことが分かります。
江戸時代からは畑の肥料に?
近世の遺跡からはそれまでに見られたイボキサゴ、ハマグリなどに加え、オオタニシ、バカガイが多く見られると言います。これは他の時代には見られない特徴だそうです。
イボキサゴは縄文時代から中世にかけて長らく食用とされてきましたが、江戸時代以降は肥料として重宝されるようになり、イボキサゴをめぐり紛争が起こる程だったといいます。
明治時代以降も戦後に肥料が普及するまではイボキサゴが肥料として重宝されており、本種の採取は漁協の組合員のみが行えるものでした。
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