不思議な生態が注目を集める深海生物たち。日本各地の水族館では、深海生物を観察できる水槽展示が人気を集めています。
深海生物を観察してみると、見慣れた魚とは異なるユニークな見た目がとくに印象的。なかでも、ひと際目を引くのはサギフエという魚です。
まるでストローのように細長い口が特徴的な魚サギフエについて、その生態と魅力をご紹介します。
サギフエってどんな魚?
サギフエ(Macroramphosus sagifue)は、トゲウオ目サギフエ科に属する深海魚です。太平洋と日本海に広く分布しており、水深20~500メートルの範囲に生息しています。
トゲウオの仲間であるため、背ビレに鋭いトゲがあるのも特徴的です。
おもに海底付近を泳ぐ深海魚ですが、夜になると水面近くまで上がってくることもあります。そのため、底曳網でたびたび漁獲されますが、食用にはあまり利用されていません。
漁獲されたサギフエは水族館に提供されるケースがあるため、深海魚を展示する水槽では比較的よく見る魚です。体長15センチほどの小さな魚ではありますが、ユニークな見た目が印象に残ります。
最大の特徴は、ストローのように細く伸びた吻(口先)です。全長の約3分の1に達するほどの長さがあり、ほかの魚には見られないユニークな特徴でもあります。
ユニークな捕食方法
ユニークな捕食方法もサギフエの魅力のひとつです。獲物に素早く接近しながら、細長い口先を使って一瞬で吸い込みます。
サギフエの食性は、成長段階によって異なります。幼魚はプランクトンを捕食し、成魚になると砂底にいる小型の無脊椎動物をエサとしているようです。
また、サギフエの口先は、ストローのような筒状になっています。吸い込むようにして獲物を食べるため、口先には歯がありません。この口の形は、獲物を効率的に捕食するために適応した姿なのかもしれませんね。
ユニークな泳ぎ方にも注目
サギフエは、頭を斜め下に向けて泳ぐ習性があります。サギフエが特徴的な泳ぎ方をするのは、砂底に潜むエサを効率的に探し出すためです。
頭を下げて泳ぐ習性は、トゲウオの仲間に共通する特徴です。水族館でよく見る魚でいうと、ヘコアユの泳ぎ方にも似たような習性が見られます。
ただし、長距離を移動するときや大型の捕食魚から逃れるときには、水平に泳ぎながら素早く移動します。行動によって変化する泳ぎ方も、魚を観察する楽しみ方のひとつです。
水族館でサギフエを観察してみよう
サギフエのストローのような細長い口や特徴的な泳ぎ方を観察すると、深海に生息するサギフエの生存戦略に気がつきます。
水族館で見つけたら、その口がどのように活かされているかじっくりと観察してみるのもいいでしょう。
(サカナトライター:taku)