人間をはじめとした哺乳類は恒温動物といいます。私たちは体温調節の機能を持っているため、外界の気温変化の影響を受けずにほぼ一定の体温を保つことができます。
では、魚はどうでしょうか?
魚は変温動物で、恒温動物とは違い体温調節をする機能を持たないため、周りの水温に影響されて体温が変化します。この記事では、海水魚における水温の重要性についてご紹介します。
海水魚は大きく水温が変化しない環境に生息する
魚は変温動物。つまり、水温が下がれば体温が低くなり、水温が上がれば体温も応じて高くなるのです。海や川の水温がダイレクトに影響するため環境の変化に敏感で、時には死んでしまうこともあるのです。
一方の淡水魚、例えばメダカや金魚などを外で飼育しているのを見たことがあるかと思います。海の生物を外で飼うというのはイメージしづらいですよね。
メダカや金魚などは池や川といった外界の温度に作用されやすい環境、さらに日本の四季に適応して育つため、水温の変化にある程度は耐えられるのです。
しかし、海水魚が住むのは広大な海の中。広い海では、海域を大きく移動しないことには水温の大きな変化がありません。このような環境にいるため温度変化に対応できる身体の作りになっていないのです。
また、観賞魚として人気のある熱帯にすむ淡水魚なども、日本の冬の寒さには耐えられないため外で飼うことはできません。飼育する場合には水温の管理が必須です。あくまで、生息する国の環境が大切というわけです。
もちろん金魚やメダカにも水温変化は大きなダメージとなります。飼育する際は室温で水温を管理すると健康を保ってあげられますよ。
温暖化で海水魚の分布が変わった
昨今は地球温暖化の影響で気温が上昇がしており、今夏も猛暑が問題となっています。では、海の温度はどれくらい変化しているのでしょうか?
海面水温の平均は、世界的にみると1920年から2020年までで約0.6℃ほど、日本近海だけを見てみると100年間で約1.3℃上昇しています(海面水温の長期変化傾向(日本近海)-環境省)。
人間にしてみたら1℃気温が上がったところで、さして問題はありません。しかし、海の生き物たちにとっては1℃の上昇は大きな問題となります。実際に、サンゴなどの死滅や、水生生物たちがすむ北限の上昇など様々な現象が起こっています。
筆者は10年ほど魚屋をやっていますが、この10年で温かい海に生息する魚が三陸で獲れるなど海の環境の変化は身に染みて感じています。
スルメイカやサンマ、サケ等の魚は年々獲れなくなっているというのは、魚を食べる消費者の皆さんもよくご存じかと思います。そのひとつの要因として、地球温暖化による水温の上昇は間違いなく挙げられるのです。
飼育水槽内での温度管理も大切
大きな話から小さな話に変わりますが、水槽内でも海と同様な考え方が大事です。海水魚を飼育する場合、水温管理は厳しく行ってください。
温度をなるべく一定に保つために、サーモスタットで水温の低下を抑え、暑いときには水槽用クーラーや、室内のクーラーを使って水温上昇を抑える必要があります。
海水魚でも2~3℃の温度変化であれば健康体なら耐えてくれますが、ダメージは蓄積します。なるべく一定に保てるように調整してください。
生き物は適正水温・気温はもちろん、元々はそれぞれ色んな環境で生活しています。
野生動物も飼育動物も同じように、人間だけでなくお互いが気持ちよく生活するためにはどうしたら良いか考えていくことで、海や川の環境へ意識が向いていくのではないでしょうか。
(サカナトライター:さかなのみかた)