ある日、筆者が浅い海の砂地で出会ったのは、カニの仲間に分類されるヤマトカラッパ。砂地からひょこっと顔を出していたので捕まえてみると、脚を綺麗に折り畳み、お饅頭のように丸くなってしまいました。
さらには鋏脚(きょうきゃく)で口元を覆い、乙女の如く恥ずかしがっている様子。もちろん、実際には恥ずかしがっていないのですが、その可愛らしい仕草に筆者は一瞬で虜となりました。
カラッパは丸々としたカニの一種
カラッパはエビ(十脚)目、カニ下目・カラッパ科に分類されているカニの一種です。世界に約70種類おり、日本には10種類のカラッパが生息しています。
日本で特にメジャーなのが、メガネカラッパ、トラフカラッパ、ソデカラッパ、ヤマトカラッパで、これらは水族館で展示されていることもあります。
ヤマトカラッパは日本で見られるカラッパの中で最も大きい種類で、筆者の捕まえた個体は約15cm程のサイズでした。
見た目の丸っこさが名前の由来
カラッパという名前は、マレー語の「kelapa=ヤシの実」という言葉が語源となり名付けられました。脚を折り畳み丸くなった姿は、たしかにヤシの実のようなフォルムですよね。
日本でもその見た目から、「マンジュウガニ」と呼ばれていたことがあるそうです。
英語ではBox crab(箱ガニ)または Shamefaced crab(恥ずかしがり屋のカニ)と呼ばれています。
カニとカラッパ、違うところは?
一般的なカニとカラッパには、一体どんな違いがあるのでしょうか。
主な違いを紹介します。
鋏脚部分の突起
カラッパはカニと同じように両手に鋏(はさみ)を持っていますが、右の鋏脚に鉤状の突起があります。この突起を巻貝のふちに引っ掛けて、缶切りのような使い方をし、貝殻を割って中身を食べるのです。
巻貝は95%程が右巻きのため、右の鋏脚が進化をしたと考えられていますが、ごく稀に鋏脚が左右逆転した左利きの個体がいることも確認されています。
口から水を出すカラッパ噴水
カラッパは身体を水に漬けると、口から噴水のように水を出す習性があります。この動作は、新鮮な海水を体に取り込むために、呼吸をしながら水を吐き出していると考えられています。
筆者が出会ったヤマトカラッパは噴水にそこまで勢いがなかったのですが、ちょろちょろと口から水を出していました。まるで水遊びしているような可愛い動作ですよね。
ペットとしてもそこそこ人気、癒しのカラッパ
カラッパは環境を整えてあげれば飼育することもできます。ペットとしてはトラフカラッパやメガネカラッパが人気です。
展示されている水族館もあるので、ぜひ機会があれば可愛いカラッパの姿を見て癒されてみてください。
(サカナトライター:草間あやめ)