小笠原諸島とは、東京湾から南に約1000キロ離れたところにある30あまりの島々の総称です。年中暖かい気候を有する亜熱帯に位置しています。
そんな小笠原諸島は、東洋のガラパゴスと呼ばれるほど生物多様性にあふれた場所。小笠原諸島の固有種を紹介します。
淡水にすむオガサワラヨシノボリ
オガサワラヨシノボリは、小笠原諸島のみにすむヨシノボリです。
クロヨシノボリによく似ており、模様のパターンも近しいですが、胸びれの付け根の黒い斑点、尾びれの付け根の「ハ」の字の黒い斑点が太いことで見分けることができます。また、小笠原諸島にはクロヨシノボリはすんでいないため、生息地や採取地で区別することもできます。
1992年に魚類学者の鈴木寿之氏が新しいヨシノボリの型を見つけてオガサワラヨシノボリと名付けましたが、2011年にようやくほかのヨシノボリ類とは異なる新種であることが認められました。
縦帯が帯に見えるオビシメ
オビシメは、ブダイ科に属する海水魚で、1993年に新種として記載されました。
メスとオスで体の特徴が違い、メスは黄色っぽい体表に白色の小さな縦帯がみられます。オスはアオブダイによく似た見た目で、体表は青っぽく、体の背中からお腹にかけて黄色の模様があるのが特徴です。この模様が帯をしめているように見えたことからオビシメと名づけられました。
岩礁域にすんでおり、ブダイと同じく藻類を食べていると考えられています。
尾の水玉が可愛いミズタマヤッコ
ミズタマヤッコはサンゴ礁にすむ海水魚で、オビシメと同じようにオスの模様から名づけられました。
白色の体表に、黒色のカメの甲羅のような模様を携えたミズタマヤッコの幼魚は、メスになるとその甲羅模様が伸びてゆき、細かいちりめん状の模様になります。それが性転換してオスになると、体は緑がかった縞模様、背びれ・尾びれに水玉模様が現れます。この水玉模様からミズタマヤッコという名前がつきました。
小笠原諸島にはなぜ固有種がたくさんいるのか?
「東洋のガラパゴス」と呼ばれるほどに、小笠原諸島には多種多様な動植物が生息しています。なぜこのような環境にあるのでしょうか。
大陸に並んで形成される小笠原諸島は、海洋プレートである、太平洋プレートとフィリピン海プレートの動きによって誕生した海洋島弧です。大陸と陸続きになったことは一度もなく、空や海を越えることのできた限られた生物のみが小笠原諸島にたどり着きました。そのなかでも島の環境に適応できた生物が生き残り、さらに進化を続けてきたので、他の地域では見られない固有種が数多く存在しているのです。
小笠原諸島には魚だけでなく、植物や昆虫、鳥類など、さまざまな種類の固有種がいます。これらの固有種は小笠原諸島の自然があってこそ存在しています。国や地元の取り組みにより、生態系の破壊を防ぐための措置が講じられ、自然保護が進んでいます。取り組みを学び実施することで、小笠原諸島の多様な生態系を守っていきたいですね。
(サカナト編集部)