ネンブツダイは透き通るような、ほのかなピンク色をした小型の海水魚です。まるで念仏をつぶやくような「ブツブツ……」といった音を出すことから、その名がついたと言われています。
このネンブツダイは一体なぜ、念仏を唱えているのでしょうか?
ネンブツダイは浅瀬に群れをなして生息する
ネンブツダイは、スズキ目スズキ亜目テンジクダイ科に属する小型の海水魚。主に日本沿岸やアジアの温暖な海域に分布しています。
ネンブツダイの体長は、最大で10センチほど。普段は浅瀬や岩礁周辺に群れを成して生息することが多いです。
色合いや形がどことなく金魚に似ていることから、釣り人たちからは“海の金魚”という愛称で呼ばれることも。あざやかな色合いのネンブツダイたちが群れながら泳ぐ様子は、見た目にも華やかで見ごたえがあります。
ネンブツダイの求愛行動と子育て
ところで、「ネンブツダイ」という一風変わった名前の由来が気になるという人も多いことでしょう。
ネンブツダイは、漢字では「念仏鯛」と書きます。この名称の由来については諸説ありますが、一説にはこの魚の生態にちなんでいるとされています。
繁殖期になると、群れを成して浅瀬に上がってくるネンブツダイ。不思議なことに、彼らはこのとき、しきりに何かをブツブツとつぶやいているかのような音を発しています。
実はこの「ブツブツつぶやく音」は単なる習性ではなく、雄が雌にアピールをする求愛行動の一種だとされています。
この音がまるで念仏を唱えているように聞こえることから、このユニークな名前が付けられたのだということです。
食用としてのネンブツダイ
名称の由来ばかりが注目されがちなネンブツダイですが、食べてみると非常に美味しい魚でもあります。小型の魚であるため、下処理が簡単で調理しやすいのも魅力のひとつ。
おすすめの調理法は、何といっても唐揚げ。カラッと揚げたネンブツダイは、骨まで丸ごと食べることが可能です。
小さなサイズ感なので頭から尻尾まで丸ごと揚げても食べられますが、下処理の際に頭部と内臓を取っておくと、より食べやすくなります。
骨が気になる人や小さな子どもに食べさせた場合は、煮つけにするのもおすすめ。じっくりと煮込むことで骨が驚くほど柔らかくなり、ネンブツダイ本来の優しい味わいを存分に楽しめます。
家庭料理や酒のつまみにもぴったりの魚なので、機会があればぜひ味わってみてくださいね。
(サカナトライター:糸野旬)