皆さんの地元には、他の地域ではあまり聞かない、ちょっと変わった呼び名を持つ生きものはいませんか?
実は筆者が住む五島列島にも、地元特有の呼び方をする魚がいます。それが「ムッチン」です。
筆者は幼少期より五島列島に住んでいますが、よく友達と「ムッチンば釣りに行こで!」と言いながら、川釣りに出かけていた思い出があります。当時は「ムッチン」という種類名だと思っていましたが、大人になって調べてみると、そんな名前の魚は存在せず、五島列島特有の呼び方だったのです。
では、五島列島民に伝わる川魚「ムッチン」の正体はいったい何なのでしょうか?
「ムッチン」を釣りに行く
「ムッチン」の正体を調べるため、幼少期の頃によく「ムッチン釣り」を行っていた牟田川に足を運びました。
この日は雨上がりのせいか、水面が濁っていました。

早速、「ムッチン」を釣り上げます。使うエサは小麦粉を水で丸めたもの。とても簡易的なエサですが、「ムッチン」はこのエサが大好きです。
5投目にして1匹釣り上げました。これが島民の間で「ムッチン」と呼ばれている魚です。

10センチほどの銀色の体で、小さめのヒレがちょこっとついています。
島民に伝わる川魚「ムッチン」の正体とは?
では、島民に伝わる魚「ムッチン」の正体は何なのでしょうか?
調べてみたところ、今回釣ったのはカワムツだとわかりました。そしてどうやら、ヌマムツという魚も、「ムッチン」と呼ばれているようです。
ヌマムツはコイ科に分類される淡水魚で、その見た目からカワムツと同種とされてきましたが、カワムツより穏やかな流れを好むことが判明し、2003年に新和名・ヌマムツが決まりました。
筆者が「ムッチン」を釣り上げた牟田川も、流れがとても穏やかな場所でした。

「ムッチン」と呼ばれている由来について調べてみたものの、資料などは見つからず、はっきりとした理由は分かりませんでした。
おそらく、一部の島民が作り出した言葉が筆者世代まで広がったのだと思いますが、個人的にはカワムツやヌマムツの“ムツ”から転じて「ムッチン」になったのではないかと考えています。
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