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船乗りの間で取引された海の怪物「ジェニー・ハニヴァー」 正体は水族館の人気者? 

読者諸氏は、海の怪物といえば何を思い浮かべるだろうか。海坊主やクラーケンなどを想像するかもしれない。古今東西、海は神秘の場所であり、怪物や神、妖怪など多くの人知を超越した存在が棲むとされてきた。

今回紹介するのは、そんな海の怪物の中でもちょっと特異な存在、「ジェニー・ハニヴァー」の正体について紹介していこう。

これが「ジェニー・ハニヴァー」だ!

写真は、筆者が所有する「ジェニー・ハニヴァー」の剥製である。

「怪物なのに剥製があるのか!」と驚く方もおられよう。それがまさに、この「ジェニー・ハニヴァー」という怪物の特異な点なのである。この剥製は、古来より西洋の船乗りの間で「奇怪な怪物の干物」として取引されてきた代物で、ヨーロッパでは博物館などにも展示され親しまれている。

ベルギーの船乗りは、これを見世物として売りさばくことで小遣いを得ていたという。古くは竜の一種ではないか、と庶民の間で噂になっていたようだ。

うつろに空いた「眼孔」、不気味な口や翼、後ろで曲げられた尾、長く伸びる「足」など、一度見たら忘れられないインパクトはものすごい。

ではいったい、この怪物の正体は何なのであろうか。

「奇怪な怪物の干物」の正体はエイ

種明かしをするとこの剥製はエイの干物を怪物のように加工したものである。

言われてみれば、と思う方も多いだろう。水族館に行ったことのある人ならば、水槽のガラス面に張り付いたエイの「顔」が印象深くて覚えている人もいるはずだ。

エイの裏側(提供:PhotoAC)

あのエイが乾燥すると、この剥製のような奇妙な顔立ちになるというわけである。

ちなみにエイの「顔」と思われている部分は実は顔ではなく、目のように見える部分は鼻腔という部分であり、本当の眼は表側にちゃんと付いている。

ジェニー・ハニヴァーの眼に見える部分も、本当は鼻腔ということだ。

エイの種類は?

筆者が所有している写真の剥製が何という種類のエイなのか、はっきりしたことはわからないがおおよその目星は付く。

伝統的に、ジェニー・ハニヴァーはガンギエイサカタザメというエイを加工して作られるようである。

サカタザメ(提供:PhotoAC)

このことから類推すると、どうやらこの剥製はサカタザメの可能性が高い。尾の形状や、全体的にスリムな体格をしていることからの推測である。

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宇佐見ふみしげ

宇佐見ふみしげと申します。水産系大学院卒です。無脊椎動物全般とフグ類、アンコウ類が好きです。変な形の生き物万歳。食べるならアユとアジ、白子など。

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