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約30年越しの発見!再調査した化石が日本初となる<海棲哺乳類>の仲間と判明【北海道阿寒町】

生物の研究において、標本を再調査することにより新たな発見があることも珍しくありません。

今回、『Peer J』に掲載された「New evidence for the co-occurrence of two genera of Paleoparadoxiidae (Mammalia, Desmostylia) from the Middle Miocene of Japan: insights into taxonomic status and paleodiversity in Desmostylia」もその一例です。

この研究では、1996年~2000年にかけて北海道釧路市阿寒町で発見された化石を再調査した結果、絶滅した海棲哺乳類「束柱目」の仲間であるパレオパラドキシア、日本初となるネオパラドキシアであることが判明しています。

束柱目(そくちゅうもく)とは

海棲哺乳類である束柱目(そくちゅうもく)はかつて環太平洋地域に広く分布していた一群であり、主にパレオパラドキシア科とデスモスチルス科に分類されます。

日本では岐阜県や埼玉県などはじめとした各地で化石が報告されており、1996年から2000年にかけて北海道釧路市阿寒町で行われた調査では多数の束柱目化石が産出しています。

30年前の化石を再調査

今回の研究では、岡山理科大学の浅井勇馬氏、林昭次准教授、足寄動物化石博物館の安藤達郎館長および澤村寛特任学芸員の研究チームにより、約30年前に発見されたこれらの化石の再調査が実施されました。

北海道阿寒国立公園(提供:PhotoAC)

調査では発見された化石の中から3点の頭蓋骨標本に着目し、近年の分類学的な新たな知見を踏まえて再同定。従来、これらの化石はすべてパレオパラドキシアに同定されていましたが、形態を詳細に検討した結果、2点は従来通りパレオパラドキシアだったものの、残りの1点はネオパラドキシアに分類されることが明らかになったのです。

日本発記録の化石

ネオパラドキシアはパレオパラドキシアによく似るものの、より大型かつ独自の形態的特徴を持つ属であり、これまで北米地域のみから知られているグループでした。

北海道阿寒町(提供:PhotoAC)

また、今回発見された北海道釧路市阿寒町のネオパラドキシアは日本国内で初記録となるほか、異なる2種のパレオパラドキシア科が同一の産地から発見されるという世界的にも珍しい事例だそうです。

3つの主要な転換期

研究チームは、この標本の発見をきっかけに束柱目全体の地質時代における種多様性の推移を解析。結果、地球規模の気候変動と関係した3つの主要な転換期が判明しました。

一つは、パレオパラドキシアの仲間が約1500万年前の温暖な気候の時期に種数を増加させ繁栄していたこと。もう一つは、約2300万年前の寒冷期に近縁なデスモスチルスの仲間が繁栄していたこと。そして最後に、約1400万年前以降に再び寒冷化が進み、束柱目全体の種数が減少し、絶滅へと向かっていったことが分かっています。

気候変動との関係を示す証拠に

今回の研究により、約30年前に発見された化石の正体がパレオパラドキシアとネオパラドキシアであることが判明しました。

また、束柱目における種多様性の推移も解析され、束柱目の繁栄と絶滅が気候変動と密接な関係があった可能性を示す初めての証拠となったのです。

これらの研究成果は、海棲哺乳類の進化史や多様性の変遷に関する研究に貢献することが期待されています。

(サカナト編集部)

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サカナト編集部

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