2026年は「午(うま)年」ですが、馬にちなんだ伝説をもつ、ワタカという日本淡水魚がいます。
ワタカは「馬魚(うまうお、ばぎょ)」と呼ばれることもある魚。この呼び名は、奈良県に伝わる、ある伝説がもとになっているといいます。
琵琶湖・淀川水系固有の淡水魚「ワタカ」
ワタカ Ischikauia steenackeri は、コイ目コイ科に属する日本固有の淡水魚です。
琵琶湖や淀川水系に分布しており、穏やかな流れと水草が繁茂する下流域や湖沼の沿岸部など、ゆったりとした水域に生息しています。成魚の体長は20から30センチほどで、やや上向きの口と、淡い青みを帯びた体色が特徴です。
ワタカ(提供:PhotoAC)主に琵琶湖産の稚アユ放流に交じって各地へ広がり、関東や北陸、中国地方、九州などでも定着が確認されていますが、本来の主な生息地である琵琶湖では個体数が激減。現在は環境省レッドリストで絶滅危惧IA類(CR)、ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いものとして指定されています。
草食性が強く、その食性によって水草の繁茂を抑制する研究が行われていたり、放流が行われたりと人間との関わりも深い魚です。
後醍醐天皇の馬の亡霊が乗り移った魚?
ワタカが「馬魚」と呼ばれる理由として、奈良県天理市に伝わる伝説があります。
ワタカ(提供:PhotoAC)南北朝の動乱期、世の中から追われる身であった後醍醐天皇は、笠置(現在の京都府・最南端)から吉野(現在の奈良県南部)へ向かっていました。
しかしその途上、現在の天理市に位置する内山永久寺で馬を失ってしまいます。その馬の亡霊が池の魚に乗り移り、草を食べる馬の顔をした魚になったとされ、人々はこの魚を馬魚と呼ぶようになったと伝えられています。
この伝説と、実際にワタカが水草を好んで食べる草食性をもつことが重なり、馬魚は「馬の魂を宿した草食の魚」として親しまれてきたそうです。
ワタカを観察してみよう
ワタカは、全国の水族館などでも観察することが可能です。
例えば、東京都武蔵野市の「井の頭自然文化園・水生物園」や栃木県大田原市の「栃木県なかがわ水遊園」、 埼玉県羽生市の「さいたま水族館」、滋賀県草津市の「滋賀県立琵琶湖博物館・水族展示室」など淡水魚に特化した水族館のほか、千葉県鴨川市の「鴨川シーワールド」や京都府京都市の「京都水族館」、高知県高知市の「桂浜水族館」などでも観察することができます。
また、岐阜県各務原市の「世界淡水魚園水族館 アクア・トト ぎふ」はテーマ水槽<2026年は午年!馬魚で福をお届け!>で1月12日まで、新潟県長岡市の「寺泊水族博物館」は2月1日まで、それぞれ同種を展示しています。
奈良県に伝わるワタカの伝説からは、遠い昔からあった人間と水族との関係性が垣間見えます。ワタカを通して、長い歴史に思いを馳せてみるのも良いかもしれません。
(サカナト編集部)
参考文献
午年は「馬魚」を見に行こう♪長岡市・寺泊水族博物館でワタカ展示 2月1日まで-新潟日報