昆虫原料を10%配合したマダイ用飼料の水槽試験が、愛媛県の研究施設で始まりました。
大日本印刷(DNP)、フィード・ワン、愛媛大学の産学連携により、新たなタンパク源の可能性を検証し、水産養殖の持続可能なエサづくりを目指すといいます。
昆虫「ミールワーム」の粉末を使用
DNPは、愛媛大学と共同で研究を進めてきた昆虫「ミールワーム」の粉末を用い、養殖マダイ向け飼料としての有効性を検証する水槽試験を開始しました。
2月5日から、500リットル水槽8基を用いて、約20キログラムのミールワーム粉末を使用する試験を実施。配合飼料大手のフィード・ワンが、愛媛県内の研究施設で運用を担うといいます。
試験では、DNPが販売しているマダイ用飼料の一部を、ミールワームの粉末に置き換えて使用。配合割合は全体の10%で、この飼料を用いて、マダイの成長への影響や健康状態などを総合的に検証します。
ミールワーム粉末(提供:大日本印刷株式会社)なお、原料となるミールワームについては、新東亜交易と連携し、安定的に調達できる体制を整えているそうです。
養殖魚の主なエサ「魚粉」にはさまざまな課題が
水産養殖は、世界的な水産物需要の高まりを背景に拡大しています。
その一方で、エサの主原料となる魚粉は輸入への依存度が高く、価格の高騰やサプライチェーンの不安定さが課題となっており、国内の養殖業ではエサ代が生産コストの6〜7割を占めるともいわれています。
カタクチイワシなどの天然資源を原料とする魚粉への依存については、安定供給の面だけでなく、資源管理や環境負荷の観点からも見直しが求められてきました。
昆虫由来タンパクに注目
こうした課題を背景に、DNPは持続可能な食料供給の実現に向けて、昆虫由来タンパクに着目。2023年からは愛媛大学と連携し、ミールワームの量産技術やその活用方法に関する共同研究を進めてきました。
今回実施する水槽試験は、これまでの研究段階から一歩進み、実際の養殖現場での活用を見据えた実装検証フェーズに位置づけられます。将来的な実用化に向け、飼料としての有効性を示す基礎データを収集することが目的です。
試験では、愛媛大学に設置したラボプラントでミールワームを乾燥・粉末化し、フィード・ワンがマダイ用飼料として加工します。
実際に撒くエサ(提供:大日本印刷株式会社)ミールワーム粉末については、加工条件を複数パターン設定し、魚粉の一部を10%置き換えた場合の適性を検証。こうした比較試験を通じて、飼料としての最適な配合条件に加え、製造や供給プロセスの最適化も目指しているとのことです。
養殖魚の成長性や耐病性の向上に寄与する可能性
評価項目には、マダイの成長速度やエサの摂取量、生残率、体成分、味などが含まれるほか、魚体の健康状態やストレス指標、耐病性に関するデータも取得する計画です。
ミールワーム粉末は、魚粉の代替原料としてだけでなく、養殖魚の成長性や耐病性の向上に寄与する可能性があると報告されています。今回の試験では、こうした機能面についても科学的に検証するとのことです。
昆虫飼料の量産と資源循環モデルを構築へ
DNP、フィード・ワン、愛媛大学の3者は、今年4月まで水槽試験を継続する予定。5月以降は、加温試験による熱耐性評価など、ミールワームが持つ機能性に焦点を当てた追加試験も計画しています。
あわせて、ミールワーム粉末の量産体制の検証も進めており、2028年度に年間100トン、2030年度までに年間1200トンのエサ用粉末を生産できる体制の構築を目標としています。
生産過程で発生するフン(フラス)やオイルなどの副産物についても、高付加価値化や再利用の可能性を検討し、資源循環型の養殖モデルの確立を目指します。
昆虫由来タンパクの飼料利用が広がれば、魚粉への依存度の低減や水産資源の保全につながることが期待されます。水産業が直面する食料・環境課題に対する、新たな選択肢の一つとして注目される取り組みといえそうです。
※2026年2月9日時点の情報です
(サカナト編集部)