世界の食糧需要が増大する中、水生生物を育てる水産養殖は年々拡大しています。
一方、魚類やエビ、タコやイカといった頭足類などの養殖では、ふ化直後から幼生期にかけて死亡率が高く、移送や選別といった人手作業が生存率低下の一因になることが知られています。
そうした中、沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究チームは、光に集まる習性(走光性)と穏やかに制御された水流を利用し、水生生物が自ら次のタンクへ移動する自動化養殖システムを開発したと発表しました。
このシステムは、養殖における初期段階の管理を自動化することで、生存率の向上と作業負担の軽減、さらに動物福祉への配慮を同時に実現することを目指しているといいます。
すくい上げない移送でストレスを軽減
従来の養殖施設では、幼生をタンク間で移す際に網や容器ですくい上げる方法が一般的でした。
しかしこの作業は、物理的な接触による損傷やストレスを引き起こしやすく、病原体への曝露リスクも高めるとされています。
アオリイカ(提供:PhotoAC)一方、今回開発された新しいシステムでは、光による誘導と穏やかな水流を組み合わせることで、生物が自発的に次のタンクへ移動する仕組みを採用しました。
これにより、直接的な取り扱いを減らし、よりストレスの少ない移送が可能に。研究チームによると、生存率が15〜25%改善すれば、同じ設備でも生産量を大きく増やせる可能性があるといいます。
IoTセンサーで環境データを常時監視
装置にはIoTセンサーが組み込まれており、水温や塩分濃度、溶存酸素などの環境パラメーターを常時測定し、データを自動的に蓄積しています。
オペレーターは遠隔からリアルタイムで状況を確認でき、異常の早期検知や給餌・換水のタイミング調整などに活用できるそうです。
養殖のイメージ(PhotoAC)また将来的には、移送される個体のサイズや状態を評価する機能も組み込み、これまで熟練者の経験に頼っていた選別作業をデータに基づいて行えるようにする構想もあるようです。
AI活用とモジュール設計で実用化へ
今後はAIとの連携も視野に入れており、自動カウントやサイズ別の自動選別、行動解析による健康状態の評価など、高度な管理機能を統合したプラットフォームとしての発展も期待されています。
システムはモジュール式で設計されているため、既存のふ化場や養殖施設に追加設備として導入することも、独立した小型循環システムとして運用することも可能。
OISTの研究チームは今後、商業規模のふ化場での実証試験や対象種の拡大を進め、産業界との連携を通じて、より持続可能で動物福祉にも配慮した次世代の養殖モデルの確立を目指しています。
(サカナト編集部)