東北大学の宮本知英大学院生と田村宏治教授らの共同研究グループは、レインボーフィッシュをモデル生物にし、棘条の形成過程の詳細を明らかにしました。
この研究成果は「Nature Communications 」に掲載されています(論文タイトル:Actinotrichia-independent developmental mechanisms of spiny rays facilitate the morphological diversification of Acanthomorpha fish fins)。
魚の棘条
魚のヒレは主に「鰭条(きじょう)」と「鰭膜(きまく)」から成り、このうち鰭条は2つに分けることができます。
1つが「軟条」です。軟条は柔軟で節があり、これまでの研究で棒状コラーゲンをガイトにして、成長することが知られています。
コバンザメ(提供:PhotoAC)もう一方の「棘条(きょくじょう)」と呼ばれ、節がなく硬いことが特徴です。
この棘条は実に多様な進化を遂げており、特徴的なものとしてコバンザメ科で見られる頭部の吸盤やアンコウ類の釣り竿などが挙げられます。
そんな様々な形に進化してきた棘条ですが、その作られ方やなぜ多様化できたのかは謎に包まれていました。
モデル生物のレインボーフィッシュ
そうした背景から、東北大学の宮本知英大学院生と田村宏治教授らの共同研究グループは、熱帯魚のレインボーフィッシュ Melanotaenia praecox を対象に実験を行いました。
ネオンドワーフレインボー(提供:PhotoAC)本種は飼育が容易であることに加え、一年を通して繁殖が可能なことから、棘条の形成過程を調べるモデル生物として最適だといいます。
棒状コラーゲンの有無
レインボーフィッシュのヒレにおけるコラーゲンの分布を詳しく解析した結果、これまで知られていたように軟条には棒状コラーゲンが配置されていることが確認されています。
その一方で、棘条には棒状コラーゲンが存在しないことが判明。さらに、棘条の先端には骨を作る細胞がキャップ状に集まっていることが発見されました。
コラーゲンが形へ進化に寄与
次に研究グループは、得られた結果から「棘条は骨の成長に棒状コラーゲンを必要としないため、骨を作る細胞の配置を自由に変え複雑な形を作っているのでは」と考えました。
そこで、着目されたのが大きな棘条を持つカワハギです。
カワハギの棘条には小さな棘があります。このトゲトゲした棘条の細胞状態を調べた結果、側方にある突起も先端と同様に骨を作る細胞が存在していることが判明しました。
この結果から、棘条では骨を作る細胞の分布を変化させることで、多様化してきた一方、軟条では棒状コラーゲンをガイドにして成長するため、骨を作る細胞を先端以外に配置しにくいと考えられています。
生き物の形の進化
今回の研究により、棘条の形成過程の詳細が細胞・分子レベルで明らかになり、コラーゲンのような細胞外基質が、生き物の形の進化に寄与している可能性が示されました。
この成果は魚類限らず様々な生物において、形の進化を解き明かす重要な知見となっています。
(サカナト編集部)