一般社団法人グッドシーは、海藻養殖が海の生態系に与える影響を検証した調査報告「GOOD SEA Future Report 第2弾」を公開しました。
日本財団の支援を受け、全国6海域の養殖藻場と周辺海域を比較した定量調査の結果、海藻養殖が魚類や小型生物、微細藻類などの生物量・種数を増加させ、養殖藻場内で独立した食物連鎖が成立する“生態系を拡張する役割”を持つことが示されました。
グッドシーは、今回の結果をもとに、解説記事や動画などの啓発コンテンツを通じて、海藻と海洋生態系の関係への理解促進を図るとしています。
海藻養殖が生態系回復の「場」に
近年、日本各地で磯焼けが進行し、海藻藻場の減少が深刻な課題となっています。そうした中、海藻養殖は水質浄化や炭素固定だけでなく、生物のすみかや餌場としての機能にも期待が高まっています。
一方で、海藻養殖の環境への効果は「よい影響がある」とされながらも、定量的データに基づいた検証例は限られていました。 グッドシーはこうした状況を受け、2023年度から継続的に海藻養殖の生態系への影響を科学的に検証しており、今回の報告はその第2弾となります。
(提供:一般社団法人グッドシー)2024年度の調査では、北海道・宮城・静岡・愛媛・山口・熊本の全国6海域で、マコンブ、ワカメ、トサカノリ、ヒジキ、フトモズク、ミリンといった計6種の海藻を対象に養殖藻場を設定し、養殖区と対照区の生物群集を比較しました。
養殖藻場とは、ロープや籠を用いて海藻を栽培することで形成される場を指しており、その海域に適した海藻を育てることで生物多様性の向上や生態系の回復が期待されると定義されています。
養殖藻場で生物量・種数が大幅増加
調査の結果、珪藻類、海藻の表面などに付着して生活する葉上動物、そして魚類のいずれにおいても、養殖藻場内は藻場外と比べて生物量・種数が増加したことが確認されました。
珪藻類では種数が最大約11倍、量が最大約48倍に増えたほか、葉上動物は種数が最大約14倍、魚類は種数が最大約9倍となるなど、海藻養殖が多様な生物を引き寄せる場として機能していることが浮き彫りになりました。
グッドシーは、海藻の存在によって付着基質が増え、そこで珪藻が増殖し、それを餌とする葉上動物、さらにそれらを捕食する魚類へと、段階的に生物群集が増加していく構造が形成されたと分析しています。
海藻をきっかけとするこの連鎖的な増加により、養殖藻場は周辺海域の生態系を補完・強化する役割を担っていると位置づけています。
養殖藻場内に独立した食物連鎖
また、藻場内の生物の胃内容物の分析からは、魚類が葉上動物を12〜36%の割合で捕食し、葉上動物が珪藻を8〜37%摂食していることが示されました。
報告書より抜粋(p.21)養殖藻場内における食物連鎖の模式図。海藻の表面に付着する珪藻を起点に、それを摂食する葉上動物、さらにそれらを捕食する魚類へと、段階的な食物連鎖が形成されている(提供:一般社団法人グッドシー)この結果から、珪藻を起点に葉上動物と魚類へとつながる食物連鎖が養殖藻場内で完結していることが明らかとなり、単なる「一時的な集合場所」ではなく、独立した小さな生態系として機能している姿が浮かび上がりました。
調査では、海藻養殖が海の生態系を大きく作り替えるのではなく、既存の生物群集の生物量や多様性を押し上げる形で“生態系を拡張する役割”を担っていると結論づけています。
全国6海域の結果をまとめた図では、珪藻・葉上動物・魚類のいずれもが養殖藻場で増加し、まとまりのある食物連鎖が形成されている様子が示されています。
解説記事や動画で啓発も強化
グッドシーは調査報告書の公開に合わせ、Webサイト上で調査結果の解説記事を公開し、海藻と生態系の関係や養殖技術の背景を一般向けに分かりやすく紹介しています。 さらに、海藻に関する調査・研究や情報発信の様子をまとめた動画コンテンツもYouTubeで公開し、海藻養殖の意義を多角的に伝える取り組みを進めています。
今回の報告は、ネイチャーポジティブやリジェネラティブな海洋利用を具体的なデータで裏付ける事例としても注目され、今後、企業や自治体による海藻養殖の活用や、海の生物多様性保全の議論にも影響を与えそうです。
今回の調査レポートはグッドシーの公式ホームページで確認することができます。
(サカナト編集部)