我々にとって身近な寄生虫の1つとして線虫(せんちゅう)が挙げられます。
線虫と聞いてもあまり馴染みがないかもしれませんが、アニサキス症を引き起こすアニサキスやギョウチュウなど、誰しもが一度は耳にしたことがある寄生虫たちが属すグループです。
また、これら以外にも、私たちが普段目にすることができない多様で複雑な寄生虫の世界が広がっているといいます。
今回、中部大学応用生物学部の長谷川浩一教授らの研究グループは、112種の線虫を用いた「祖先状態復元」により、線虫がどのようにして多様な寄生性を獲得したのかを明らかにしました。
この研究成果は「Ecology and Evolution」に掲載されています(論文タイトル:Evolution of animal parasitism in nematodes of the suborder Spirurina)。
海から陸へに進出
生命が海で誕生したのは、約40億年前とされています。約5億年前には生物は海から陸上へ進出しはじめ、その中には1ミリほどの線虫も含まれていました。
厳しい陸上で生きていくうえで、生物たちは影響し合いながら進化をし、線虫においては非寄生性だった一部が、繁栄する動物に適応する形で進化していったのです。
宿主を乗り換えながら進化
今回の研究では、線虫たちの寄生性の起源が複数回にわたり独立して進化させたことが明らかになっています。
まず、陸上生態系へ適応した非寄生性の祖先系統は、古生代シルル紀に陸上へ進出したヤスデへの寄生性を獲得しました。
その後、爆発的に繁栄した昆虫などへ寄生性を拡大。哺乳類の誕生とともにそれらへの寄生性も獲得し、ギョウチュウやカイチュウの祖先となったのです。
アニサキスまでの進化
非寄生性の別系統は、淡水性のカイアシ類に捕食されるうちに寄生性を獲得。カイアシ類から魚類・両生類、さらには哺乳類へと宿主を乗り換え、現代の顎口虫に繋がったといいます。
また、ヤスデ寄生性を獲得した系統の一部も同様にカイアシ類に捕食されるうちに寄生性を獲得しました。これらは、今度は海洋生態系へと戻り、オキアミ類から魚類、海産哺乳類へと宿主を乗り換えながら進化し、アニサキスへと繋がっています。
アニサキス(提供:PhotoAC)病気の根本的な解決に貢献
今回の研究によって、線虫たちがどのようにして多様な寄生性を獲得したのか明らかになりました。
また、この研究は寄生・共生・病理性の生物間相互関係を理解することで、病気の根本的な解決に貢献する基礎研究にもなりました。
(サカナト編集部)