サカナをもっと好きになる

キーワードから探す

ニュース

外来微生物が北極海の物質循環を変える可能性 東京大学が新たな証拠を発表

東京大学大気海洋研究所の塩崎拓平准教授らの研究グループは、海洋地球研究船「みらい」による2015年から2020年までの北極海観測を通じて、海氷融解後にベーリング海から窒素固定生物「UCYN-A2」が北極海海盆域まで流入していることを突き止めました。

海氷融解に伴いベーリング海から流入する窒素固定生物が、北極海内部の窒素・リン循環に変化をもたらしていることが明らかになっています。

本研究成果は、学術誌「Global Change Biology」に掲載されました(論文タイトル:Enhancing role of nitrogen fixation in biogeochemical cycles of the Pacific Arctic

温暖化による海氷減少

UCYN-A2はハプト藻に共生する窒素固定生物で、大気中の窒素ガスをアンモニアに変換する能力を持ちます。

特に2017年には、海氷融解が早く進行したことでUCYN-A2が北極海内部まで効率的に輸送され、その窒素固定速度は深層からの硝酸塩供給を上回るほど高い値を示しました。

氷河(提供:PhotoAC)

この結果、2017年の北極海海盆域では窒素固定が基礎生産をコントロールしていたことが判明。また、窒素固定が活発だった海域では表層のリン濃度が低下しており、窒素循環だけでなくリン循環にも影響が及んでいることが確認されました。

海洋研究開発機構の地球シミュレータを用いた数値シミュレーションからは、UCYN-A2の分布に海氷融解のタイミングが深く関与していることが明らかになりました。

太平洋起源の水とともに北極海へ運ばれてくるUCYN-A2は、海氷融解が早い年ほど北極海内部まで到達しやすくなることが示されました。

北極海で急速に進む温暖化

北極海では温暖化が進行しており、海氷減少に伴って低緯度からの海水流入量が増加しています。

外来生物が北極海の生物多様性に影響を及ぼし始めていることはすでに報告されていましたが、物質循環への影響が直接的な観測で実証されたのは今回が初めてです。

アイスランドの氷塊(提供:PhotoAC)

近年、北極海海盆域では海氷減少に伴う循環場の変化によって表層の貧栄養化が進行しており、2002年から2004年と比較して2015年から2020年の硝酸塩濃度は顕著に低下しています。

今後、海氷融解の時期がさらに早まり、UCYN-A2の流入量も増加していく可能性があることから、窒素固定が北極海の物質循環において無視できないプロセスとなることが見込まれるといい、研究グループは今後の実態解明と従来の予測モデルの見直しが必要だとしています。

(サカナト編集部)

  • この記事の執筆者
  • 執筆者の新着記事
サカナト編集部

サカナト編集部

サカナに特化したメディア

サカナに特化したメディア『サカナト』。本とWebで同時創刊。魚をはじめとした水生生物の多様な魅力を発信していきます。

  1. 外来微生物が北極海の物質循環を変える可能性 東京大学が新たな証拠を発表

  2. 下田海中水族館で<魚たちと泳ぐ新体験>? 「大水槽おさかなウオッチング」開始【静岡県下田市】

  3. 琵琶湖の魚を捕って食べる? <地引網体験&湖魚の味覚と自然学習>を楽しむイベント開催【滋賀県大津市】

関連記事

PAGE TOP