一見きれいな魚の中には、毒を持つものもいます。
魚が持つ毒の中でも代表的なのがシガテラ毒。大きなハタの仲間やイシガキダイなどの魚が有する毒だといわれています。
シガテラ毒とはどのような毒なのでしょうか? また、もし誤って摂取してしまった場合、どうなってしまうのでしょうか?
原因は有毒の小さな藻類
シガテラ毒の原因は、熱帯・亜熱帯のサンゴ礁に生息する渦鞭毛藻(うずべんもうそう)が産生する「シガトキシン」という毒素です。
この有毒の小さな藻類が付着した海藻などを、魚類やウニ、カニなど藻食性の生物が食べ、さらに肉食性の魚類が藻食性生物を食べるという食物連鎖によって、シガトキシンが伝搬、蓄積します。
シガトキシンを多量に蓄積した魚をヒトが食べると食中毒となります。
シガテラ毒は加熱しても意味がない!
シガテラ毒を有するとされている魚種のなかでも、このシガトキシンが蓄積されていない個体はシガテラ毒がないため、食べても中毒症状を起こすことはありません。
しかし、シガテラ毒を持つ魚として挙げられるものを食べるのは避けたほうが良いでしょう。
シガテラ毒は加熱しても消えず、見た目や味でもその毒の気配は分かりません。
かつては沖縄など南方が中心の話でしたが、近年は本州でも中毒事例が出ています。海水温の上昇とともに、この毒が身近になりつつあるのかもしれません。
シガテラ毒をもつ魚たち 特に気をつけたい3種
厚生労働省の「自然毒のリスクプロファイル」には、シガテラ毒を持つ魚として複数の種が掲載されています。
その中から特に気をつけたい3種を紹介します。
シガテラ毒を有する代表種<バラハタ>
バラハタは、赤色の体に三日月形の尾びれが印象的なハタ科の魚です。
他のハタ類が海底付近にとどまるのに対し、バラハタはサンゴ礁の中層を活発に回遊します。
沖縄では高級魚として流通しますが、毒を持つ個体は体色が黒ずむことから、地元の漁師たちに「ヤクザ」と呼ばれ区別されてきました。
厚生労働省のリストでは強毒に分類されています。
<イシガキダイ>大型個体には注意が必要
次に、イシガキダイです。
イシガキダイは石垣のような模様が特徴的な磯の肉食魚です。くちばし状に融合した強靭な歯でウニやサザエを砕いて食べます。
イシガキダイ(提供:PhotoAC)成長したオスは模様が消えて口元が白くなり「クチジロ」と呼ばれ、磯釣り師の憧れの存在でもあります。
毒性は弱毒とされますが、近年は本州での中毒事例も増えており、南方産の大型個体には注意が必要です。
見かけたら注意が必要<キツネフエフキ>
最後に紹介するのが、キツネフエフキ。名前のとおりキツネのように口先が細長く、突き出た独特の風貌を持つフエフキダイ科の大型魚です。
キツネフエフキ(提供:PhotoAC)全長1mに達することもあり、鹿児島県以南等のサンゴ礁や岩礁域に生息。体側の模様を瞬時に消したり出したりできる、変幻自在な一面も持っています。
厚生労働省のリストでは通常は弱毒ですが、稀に猛毒の個体も確認されており、注意が必要な魚のひとつです。
シガテラ中毒の症状は?
シガテラ中毒の特徴的な症状が「ドライアイスセンセーション」です。
水など冷たいものに触れると、ドライアイスに触ったときのような電気が走るような痛みを感じる、温度感覚の異常です。
そのほか、下痢や嘔吐、関節痛なども伴い、重症の場合は数ヶ月から1年以上症状が続くこともあります。現在、特効薬は確立されていません。
予防の基本は、南方産の大型肉食魚を食べる際に注意すること。特に内臓への毒の蓄積は筋肉より多いとされています。
“食物連鎖”が生み出す毒の脅威
中毒を引き起こすシガテラ毒ですが、シガテラを持つ魚たちは南の海の生態系を支える存在でもあります。
毒は彼らが意図して持つものではなく、食物連鎖の中で自然に積み重なった結果です。
魚たちの裏にある自然の仕組みを知ることで、海の生き物たちへの見方が少し変わるかもしれません。
(サカナトライター:そい太)