ある日の休日、3歳の息子と磯遊びをしていた時です。
息子が「何かある!」と磯から少し離れた歩道を指差しました。
筆者は目が悪く、遠目ではそれが何なのか分からず、ただ大きな岩のようなものが見えるだけでした。
息子の手を引きながら近づいていくと──その岩の正体は、水族館でしか見たことのないような大きなウミガメの死体だったのです。
ウミガメが漂着していた海にはゴミがたくさん
全長90センチ程のウミガメは、息を引き取ってからあまり時間が経っていないようで、腐敗臭などは一切感じませんでした。
ただ、右後ろ脚が欠損しており、欠損した足はすぐ近くの磯に、ほとんど原形を保ったまま残っていました。息絶えた後に、カラスなどについばまれてしまったのでしょうか……。
今回、ウミガメが漂着していた場所ですが、筆者が幼少期の頃は、真っ白な砂浜にエメラルドグリーンの海が輝く、とても素敵な場所でした。
しかし、十数年ぶりに訪れたそこは当時と比べて明らかにゴミが増えているように感じます。
綺麗だった砂浜は見る影もない……(撮影:ティガ)磯には漁具の破片が至るところに散乱し、真っ白で綺麗だった砂浜には、漂着した魚の死骸や海外から流れ着いたゴミが点在しています。
かつて爽やかだった潮風は、腐敗臭の混じった重たい匂いへと変わっていることに気が付きました。
海洋ゴミがウミガメに与える影響を調べてみた
近年、海洋ゴミを誤飲したウミガメが世界中で確認されており、深刻な問題となっていることを思い出しました。
実際に、2006年から2007年にかけてブラジル南岸で発見された34個体のアオウミガメを調査したところ、全ての個体の気管や胃、腸から人工物が発見されたといいます。
その多くはプラスチック片でしたが、釣糸やロープ、ゴムなども確認されており、海洋ゴミがウミガメの生存に大きな影響を与えていることが分かっています。
中華圏から流れ着いたプラスチックゴミ(撮影:ティガ)また、私の地元である五島列島も他人事ではありません。
2025年には、多々良島周辺の海中から巨大な漁業系プラスチックごみの塊(ゴーストギア)が回収されたという報告もあります。
このようなゴミがウミガメをはじめとした海洋生物たちに影響を与えていることは、想像に容易いです。
釣りや漁の際に使う発泡スチロールだろうか(撮影:ティガ)筆者は専門家ではないため、今回発見したウミガメの死因を断定することはできません。
しかし、今回発見した個体には、目立った外傷が見当たらなかったため、こうした環境の変化と無関係ではないのかもしれないと思わずにはいられませんでした。
ウミガメを発見した際はどうすればいい?
筆者は突然の出来事にどうして良いか分からずその場を後にしてしまいましたが、ウミガメの死体を見つけた場合は自治体や漁港等の管理者、ウミガメの調査や研究、保全などを行っている日本ウミガメ協議会などへ連絡した方が良いようです。
上記の機関に連絡することで、ウミガメが漂着した原因や死因の調査、生態情報の蓄積などが行われます。それらの情報は、絶滅の危機に瀕しているウミガメ達を保護するためにも役立つといいます。
次世代へ豊かな海を繋げるために
今回ウミガメの死体を発見して一番辛かったのは、一緒に遊びにきていた3歳の息子の表情です。
まだ「死」という概念を深く理解できていないものの、海の生き物が大好きな息子は言葉を発さず、動かなくなったウミガメを見てとても悲しそうな表情をしていました。
筆者の大好きな地元、五島列島。これからこの島で、この地球で育っていく子供たちのためにも、僕たち大人が、この環境問題と向き合っていかなければならない。
そう強く感じた一日でした。
(サカナトライター:ティガ)
参考文献
「ゴーストギア調査隊」、高さ3メートル・幅1メートルの大型漁業系プラスチックごみの塊を海中から引き上げ ――長崎県五島市多々良島付近-WWFジャパン
ウミガメ保護ハンドブックー環境省自然環境局、NPO法人 日本ウミガメ協議会
MORIYA Fukashi. 2006~2008年の房総半島におけるウミガメ類の漂着. Natural History Research. 2010, 11(1), p.47–52.