ヤマトヌマエビ2匹が暮らす、わが家の水槽。
とある日のこと。2日に1回エサを与えていますが、その日、ヤマトヌマエビたちは私がエサを入れたところを見ていませんでした。それにもかかわら数秒後、砂利に沈んだエサへと一直線に向かっていったのです。
「ニオイで分かるにしても、正確すぎでは?」と驚きました。
これにはヤマトヌマエビが持つ“センサー機能”が関わっているようなのでした。
見ていないはずのエサに気づくヤマトヌマエビたち
今のわが家の水槽は、沈水植物であるオオカナダモ(アナカリス)が数本とヤマトヌマエビ2匹で寂しい雰囲気になっています。
ヤマトヌマエビ(提供:PhotoAC)かつてはメダカがいたので、ヤマトヌマエビはその食べ残しをエサにしていました。しかし、今となってはメダカがいなくなったのでエサの食べ残しもありません。
そこで、ヤマトヌマエビ用のエサを入れることにしたのです。
確実にエサに辿り着くエビたち
2日に1回の頻度でエサを入れ始めたのですが、1つ驚くことがありました。
なんとヤマトヌマエビたちはエサを見てないにもかかわらず、確実に与えたエサまでたどり着くのです。特に2本の長いセンサーをせわしなく動かして、アナカリスの間を縫うようにして移動しています。
一体、どのようにしてヤマトヌマエビたちはエサを見つけているのでしょうか。
水の中でニオイがわかる?
ヤマトヌマエビがエサまでたどり着ける秘密は、水中で拡散される化学物質が手掛かりになっているようです。
水の中では、ニオイは空気中のように「広がって消える」のではなく、エサや有機物から出た成分が流れに乗って広がっていきます。
ヤマトヌマエビ(提供:PhotoAC)ヤマトヌマエビはこの水流の中に混ざった微量の化学物質(アミノ酸や分解物など)を感知して、エサの位置を特定。ニオイを嗅ぐというよりも、水の中の化学物質が濃い場所へ痕跡を辿って行くような感覚に近い働きをしているようです。
そのため、ヤマトヌマエビはエサを見ていなくても、エサの成分を感知して一目散に駆けつけることができるのです。
エビの左右の触角は“高性能センサー”
ヤマトヌマエビの頭部から伸びている長い触角は、ただの飾りではなく重要な感覚器官です。
この触角には化学物質や水流の変化を感じ取る受容器が多く存在し、「水中レーダー」のような役割をしています。
左右の触角でわずかな違いを比較することで、どの方向にエサがあるかを判断していると考えられています。
さらに、足の先や体表にも感覚器があり、触れた瞬間に「食べられるものか」「移動すべき方向か」を素早く処理することが可能です。
なぜ見ていないのに正確にたどり着けるのか
ヤマトヌマエビは背中に目がついているわけではなく、実際には水中に広がるごくわずかな化学物質の変化を手掛かりにしながら、触角や体表の感覚器でその流れを読み取り、エサのある方向へと正確に移動している訳ですね。
水槽でツマツマとエサをつまむ姿も可愛いですが、遠くから一直線に触角を動かしながら向かう姿もまた魅力的です。
そんな可愛らしさの中に化学的で高度な仕組みが働いていると考えると、ヤマトヌマエビの触角が動く様子をいつもとは違った目線で観察できそうです。
(サカナトライター:高良あさひ)