多細胞性の球状緑藻類「ボルボックス」。
世界で約26種が知られており、このうち2ミリを超える大型種が4種、アフリカや南アジアなどから報告されています。一方、日本ではこうした大型ボルボックスの報告はこれまでありませんでした。
こうした中で、大阪工業大学、法政大学、山口大学、東京大学大気海洋研究所、国立環境研究所、タイ・コンケン大学、日本女子大学の研究グループは、日本の3地点から2ミリを超えるボルボックスを採取。これらを詳しく調べた結果、未記載種であることが明らかになりました。
この研究成果は『Phycologia』に掲載されています(論文タイトル:Large green spheroids and taxonomy of Volvox chrysoprasus sp. nov. (Volvocaceae, Chlorophyta) from Japan)。
ボルボックスの大型種
ボルボックス(Volvox)は緑藻の1種であり、世界から約26種が知られています。
また、ボルボックスの中には2ミリを超える種が、アフリカや南アジアなどから知られていますが、日本からはこうした大型種は報告されていませんでした。
こうした中で、大阪工業大学、法政大学、山口大学、東京大学大気海洋研究所、国立環境研究所、タイ・コンケン大学、日本女子大学の研究グループは、日本の3地点から大型のボルボックスを採取。得られた株を、形態学的・分子系統学的に詳しく調べました。
まるで緑色の宝石
今回、研究の対象となったのは埼玉県松伏町、大阪府の淀川城北ワンド、山口県阿武川ダムから得られた3株です。
阿武川ダムのダム湖(提供:PhotoAC)これらの株は小さな体細胞が10,000個以上表面に並ぶ大きな緑色の球状個体を持つこと、長径が約2.4~2.8ミリに達することから、緑の宝石を彷彿させる見た目をしています。
また、日本産3株はフィリピン、インド、タイ、オーストラリアなどから報告されている巨大種 Volvox dissipatrix と無性個体の形状が酷似することが明らかになりました。
一方、有性生殖によって形成される接合子を詳しく比較した結果では、重要な違いが発見されています。
近縁種との違い
形態的な差異として日本産3株では、成熟した接合子の壁が二層からなり、外側が円滑で内側に波状または網目状の構造が見られます。また、接合子は広いゼラチン質の層で包まれつほか、受精前の卵があった位置をほぼ保持したまま成熟するといいます。
これに対し、タイ産の V. dissipatrix では成熟した接合子の壁は外側も内側も円滑であること、日本産3株で見られたゼラチン質の層も確認されていません。また、受精前にあった卵の位置は移動し互いに接近することもあったようです。
さらに5種類の緑藻体遺伝子を用いた分子系統解析では、日本産3株は V. dissipatrix にもっとも近縁である一方、独立した系統であることが示されています。
ヒスイボルボックスと命名
研究グループは、日本産3株は形態的・分子系統学的な証拠から、未記載種であるとし、Volvox chrysoprasus M. Nagashima & N. Ueki sp. nov. として記載しました。
種小名の“chrysoprasus”は、緑色の宝石であるクリソプレーズに因んでいます。また、和名は透明感のある緑色は球体として水中を泳ぐ姿から、和名をヒスイボルボックスと命名されました。
ボルボックス類への理解を深める材料に
今回の研究によって、日本の3地点から得られたボルボックス類が未記載種であることが判明し、ヒスイボルボックス Volvox chrysoprasus M. Nagashima & N. Ueki sp. nov. として新種記載されました。
ヒスイボルボックスの発見はボルボックス類の多様性や分類体系、その進化を理解する上で重要な材料になるとされています。
(サカナト編集部)