豊かな自然が広がる鹿児島県・薩南諸島。中でも、与論島の沿岸はサンゴ礁が発達する日本屈指の海域です。
サンゴ礁は豊かな生態系を形成し、海洋における生物多様性を育むことでも知られています。こうした海域から新種や希少種が発見されることも珍しくありません。
今回、鹿児島大学大学院理工学研究科の上野大輔教授らの研究グループが新種記載した寄生虫も、その一例です。
豊かな生態系を形成するサンゴ礁
琉球列島の中北部に位置する薩南諸島は豊かな自然を有しており、中でも与論島の沿岸はサンゴ礁が発達しています。
サンゴ礁は高い生物多様性を示すことで知られ、海洋における生物多様性の25パーセントを育むとも試算される環境です。高い多様性を示すことから、こうした海域から新種や希少種が見つかることも珍しくありません。
そうした中で研究グループは、薩摩諸島の広域から寄生性のカイアシ類である、ヒジキムシ科ウノカンザシ属の1種を発見しました。
学名は“イナバウアー”から命名
得られた標本は、過去に記載されたいずれの近縁種とも異なる特徴を持っていることを明らかになっています。
これに伴い研究グループは、この寄生虫を新種として記載し、Cardiodectes laybackinabaueroides と命名しました。種小名の“laybackinabaueroides”は「本種が背側に大きく反り返り、頭部の背面が胴体の背側に接触しそうに見えること」から、フィギュアスケートの“レイバック・イナバウアー”に因んでいます。
宿主魚の一つであるアマミスズメダイ(提供:PhotoAC)また今回、薩南諸島から発見された新種は、様々なスズメダイ科魚類に寄生する一方、宿主の多くが未成魚であることも特徴です。
このような特徴から、白髪のようにも見える細長い卵のうを体側にぶら下げることに因み、標準和名は「スズメノワカシラガ」と命名されました。
マイクロCT解析により腎臓に食い込む様子も
さらに、研究グループはマイクロCT解析から3Dモデルの構築を行いました。
その結果、スズメノワカシラガの頭部は魚の腎臓に深く食い込み、静静血を摂食する可能性が示されたとのこと。寄生部である腎臓は大きく膨れ上がることから、宿主への影響は大きいとされています。
なお、本種は薩南諸島海域からのみ発見されており、この海域が本種の分布の中心域と考えられているようです。
鹿児島海域における自然の豊かさを示す成果
今回の研究によって、薩南諸島海域から発見されたカイアシ類が新種として記載されました。本種はスズメダイの幼魚に多く寄生すること、長く細長い卵のうが白髪にみえることから、スズメノワカシラガと命名されています。
また、マイクロCT解析によって、スズメダイの腎臓に寄生する様子が鮮明も記録されました。この新種の発見は鹿児島海域の自然の豊かさ、稀少さを示す根拠となっています。
この研究成果は『Marine Biodiversity』に掲載されています(論文タイトル:Non‑destructive approach using micro‑CT for understanding the strategy of mesoparasitism of the genus Cardiodectes (Copepoda: Siphonostomatoida: Pennellidae) on marine fishes, with a new species description from coastal waters of the Ryukyu Islands, the western North Pacific.)。
(サカナト編集部)