皆さんが普段よく耳にする言葉に意外と魚に関係する言葉が紛れていたりします。もちろんそれらは魚好きの間では当たり前かもしれませんが、私も魚を詳しく知るまでは意外と知らなかったような言葉たちです。
この記事では、そうしたサカナにまつわる言葉たちをご紹介いたします。
広島東洋カープ
プロ野球の球団は「ライオンズ」や「タイガース」など、生き物の名前の球団が多くあります。では、広島東洋カープの「カープ」とは何か、皆さんご存じですか?
実は「カープ(Carp)」とは、コイの英名なのです。広島にある広島城は別名「鯉城(りじょう)」と呼ばれます。この広島城と出世魚のコイをチーム名にしたのが広島東洋カープです。
ただ正確に言うとコイは成長に伴って呼び名が変わることはありません。中国の大河・黄河のはるか上流に「龍門」という伝説の地があり、そこに泳ぎ着いたコイが龍門の急流の滝を飛び越えると「龍」になるという伝説があります。これは「こいのぼり」の由来となったお話でもあります。
成長しても名前は変わりませんが、このようにコイは出世する縁起のいい魚として親しまれており、球団もそんなコイの魅力から「Carp」と名付けたのでしょう。
野球ファンの中では常識でも、カープのロゴやマスコットにもコイは出てこないので意外と知らなかった方は多いのではないでしょうか。
とどのつまり
「とどのつまり」とは、いきつくところ、結局、思わしくない結果である場合に用いる言葉です。この「とど」とは、海獣のトドではありません。
これはボラのことなのです。
ボラは出世魚で、関東ではオボコ→イナッコ→スバシリ→イナ→ボラ→トドと大きくなるにつれて呼び名が変わっていきます。その成長の行きつくところが「トド」なので、「とどのつまり」という言葉になるのです。
ボラが大きくなるのは喜ばしいことなのに何故ネガティブな意味合いになってしまったのでしょう……。
にべもない
愛想がない、素っ気ない話し方や行為のことです。この「にべ」もそのまま「ニベ」という名の魚から来ています。ニベの浮き袋からとった膠(にかわ)である「鰾膠(にべ)」は粘着力が非常に強く、接着剤となりました。
この強い粘着力を持つ「にべ」を愛嬌や親密性と見立て、さらに「それらが無いこと=にべもない」となったのです。
「にべもない」で調べると、「にべ」は「関東でイシモチと呼ばれる魚のこと」という説明が出てきます。関東でイシモチと呼ばれる魚は「シログチ」と「ニベ」の2種類がいます。どちらかというとイシモチとは「シログチ」を指すことのほうが多いようです。
しかしさらに調べると、「にべもない」のニベは、シログチでもニベでもない、東シナ海、南シナ海などで揚がる別種のものだそうです(ニベ-ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑)。
では、「にべもない」の本当の語源となった魚はなんなのでしょう。ここから先は、筆者が旅先で見かけたとある魚とその考察をご紹介します。
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