外国映画の食事シーンなどでよく目にする「ロブスター」。日本人にはあまりなじみのない食材であり、実際には食べたことのない人も多いのではないだろうか。
今回はそんなロブスターがそもそもどんな甲殻類なのか、その生物学的分類や生態、食味について詳しく紹介していこうと思う。
ロブスターとは
ロブスターはエビ目・エビ亜目・ザリガニ下目・アカザエビ科・ロブスター属に属する2種、ヨーロッパウミザリガニと、アメリカウミザリガニを指すことが多い。
ヨーロッパウミザリガニは大西洋のノルウェーから地中海近辺に、アメリカウミザリガニは大西洋西岸のカナダからカリブ海にそれぞれ分布する。
ロブスターは「オマール海老」と呼称されることもあり、ふたつは同じものである。また、広義の「ロブスター」にはイセエビやアカザエビ(深海性の硬い殻と大きなハサミを持つエビ)などをも含むことがある。
余談であるが、イセエビはエビ亜目のうちでもイセエビ下目であり、いわゆるウミザリガニ類が持つような大型のハサミはない。
また、普段我々にむきエビなどでなじみ深いクルマエビなどの種は、エビ目のクルマエビ亜目に属するため、ロブスターとはかなり縁遠い種である。
早い話が、ロブスターはアメリカザリガニ等のザリガニ類に近縁だということである。両者はザリガニ下目として共通の分類である。
ロブスターの生態
ロブスターは浅い海の岩礁地や砂地に穴を掘り、単独で生活している。
ロブスターの生態に大きくかかわっているのが、大きな対のハサミである。このハサミはそれぞれ形が異なっており、一方が「クラッシャー」、もう片方は「カッター」と呼ばれている。
「クラッシャー」のハサミは太く分厚い外見をしている。これは硬い殻を持つ甲殻類や貝の殻を砕くためにある。
一方「カッター」のハサミは細くスマートな外見で、餌の肉を細かく切りわけるのに使用する。「クラッシャー」「カッター」は左右どちらのハサミでもよく、硬い餌がいない環境では両方のハサミが「カッター」になることもあるという。
ロブスターの味
ロブスターは茹で、蒸し、焼き、ソテー、スープなど様々な調理法で料理される。
フランス料理では代表的なロブスター料理としてぶつ切りにしたものを炒め、コニャックやワインなどの酒類、魚から取ったスープとともに煮込むものがあり、人気である。
一般的に日本で流通しているロブスターは主にアメリカウミザリガニで、ヨーロッパウミザリガニはほとんど出回っておらず希少とされる。味わいは後者の方が上で、大変濃厚であるという。
日本人にはなかなかなじみの薄いロブスターであるが、海外では大変人気の食材である。機会があればロブスターを食べてみて、その生態に思いをはせるのはいかがだろうか。
(サカナトライター:宇佐見ふみしげ)