突然ですが、みなさんは初恋の相手のことを覚えていますか?
筆者の初恋の相手は人でなく、魚のオイカワでした。
川に輝くエメラルドグリーンの綺麗な魚は「オイカワ」だった
今回は、私が恋に落ちた魚、オイカワについてお話したいと思います。
魚、特に日本産淡水魚が幼い頃から大好きな私は、川に出かけては魚を捕まえて観察する日々に明け暮れていました。
ある夏の日のことです。いつものように川に向かうと、水面からでもわかる、ひときわ輝く魚が泳ぎ去るのを目にしました。
日本産淡水魚は銀色や薄い水色など落ち着いた色合いの魚が多いです。しかしその魚の色は、一瞬目にしただけなのに、赤、青、銀、エメラルドグリーンなど、たくさんの色が目に飛び込んできました。
もっと近くで観察したいと思い、服をずぶ濡れにしながら無我夢中になって追いかけました。
やっとタモ網の中に入ったとき、その体色の美しさに、もう衝撃と感動の嵐で……放心状態になったのを今でも覚えています。
胸鰭や背鰭に濃く入った鮮やかな赤色。体色は、普段の銀白色から沖縄の海のようなエメラルドグリーンとうっすら入るピンクのグラデーション。
本当に日本産淡水魚か……? と、当時の私はしばらくタモ網の中に入ったその魚を見つめ続け、気づいたら恋に落ちていました……。
それが、“婚姻色”に体色を変化させた「オイカワ」でした。
オイカワに現れた婚姻色は期間限定の姿
婚姻色とは、一般的には、動物や魚、両生類、爬虫類などの繁殖期にだけ出現する体の色のことをいいます。
通常はオスに現れますが、メスに現れる場合もあります。つまり、期間限定の姿!! そこがまた素晴らしいと私は思います。
今となっては、オイカワの婚姻色を見ると「夏が来たんだな~」と感じるようになりました。おかげさまで、毎年惚れさせてもらっています(笑)
絶滅危惧種ではないものの…
オイカワは、絶滅危惧種などには指定されていない魚ですが、河川改修工事やブラックバスなどの外来魚の捕食により、私達が知らないところで静かに被害を受け続けています。
今は「身近な生き物」として姿を見られていても、いつかは絶滅の危機に瀕してしまうのではないかと、不安な気持ちになります。そして、この先も絶滅することなく生きていてほしいと強く思います。
夏はぜひ、婚姻色のオイカワを見に川へ出かけてみて下さい。そして、私のようにオイカワや生き物のことが好きになっていただけたら嬉しいです。
魚や生き物に優しい人が増えると、将来の自然環境も大きく変わっていくと思います。一緒にフィールドライフを楽しみましょう!
(サカナトライター:川鮫工房)