ブラックタイガーといえばスーパーへ行けば必ず売られている輸入エビですが、実は日本にも分布しているのをご存じでしょうか?
さらに近年、ブラックタイガーは北上傾向にあると考えられており、目が離せないエビでもあるのです。
ブラックタイガーとは
ブラックタイガーは熱帯・亜熱帯に生息する十脚目・クルマエビ科に属する甲殻類です。体長33センチに達する大型種で、クルマエビ科の中でも最大級のサイズを誇ります。
本種の自然分布はインド洋・西太平洋の熱帯・亜熱帯ですが、近年、西アフリカ、南米、メキシコ湾からも記録があり、メキシコ湾では再生産しているようです。
クルマエビ科はクマエビやクルマエビなど水産上重要な種が多く含まれますが、ブラックタイガーは特に流通量が多く、我々の食生活に欠かせません。
本種は天然物の流通が少なく、養殖が盛んに行われていることも特徴です。東南アジア各国で養殖が行われており、主な生産地はインドネシア、タイ、ベトナムです。過去に鹿児島県や沖縄県で養殖の試みがありましたが、実用には至りませんでした。
また、ブラックタイガーの養殖業は1990年代まで盛んに行われていましたが、ホワイトスポット病やイエローへッド病などの病気が蔓延したことや、より病気に強く低コストで生産可能なバナメイエビの養殖の成功により、本種の生産量は減少傾向にあると言われています。
ブラックタイガーは日本にも生息
ブラックタイガーと聞くと海外の甲殻類と思いがちですが、実は日本にも分布しているのです。標準和名をウシエビといい、高知県、沖縄県、伊勢湾で僅かに漁獲があります。
とはいえ、流通するブラックタイガーは海外で養殖されたものであり、国内の天然物が流通することは稀とのことです。
ブラックタイガーは体が黒いことに加えてトラのような模様があることから名付けられましたが、標準和名のウシエビは本種がクルマエビ科の中でも大きくなることから名付けられました。同じく海洋生物だとウシサワラが同様の由来でウシが付いていますね。
ブラックタイガーは北上している?
ブラックタイガーは日本に分布しているものの、東京湾か房総半島が北限とされていました。しかし、2024年1月に公表された論文「茨城県の河口汽水域におけるウシエビの北限記録」では茨城県で複数個体のウシエビが採集されており、かつての北限記録を大幅に更新する結果となりました。
ウシエビの出現は黒潮が大きく関係していると考えられている他、繁殖可能な水温25度以上の海域で繁殖している可能性もあるそうです。また、近年、黒潮が北上傾向にあることから今後、ウシエビの記録が増加するのではないかとも考えられています。
ブラックタイガーといえば冷凍エビのイメージが強いですが、実は日本にも分布するエビなのです。今後、食用だけではなく海の環境変化を確かめる上で重要な役割を持つかもしれません。
(サカナト編集部)