大日本印刷株式会社(DNP)と愛媛大学は4月22日、養殖魚の餌となるミールワームの量産を検討する施設を愛媛大学の校内に設置したと発表しました。
両者は持続可能な食糧供給を目指し、ミールワームを量産する共同研究を2023年8月に開始。2025年10月には、ミールワーム粉末を年間3トン生産できる施設を本格稼働するとのことです。
【画像】南米ペルーでこの魚が減ると日本の養殖魚の価格が上がる?
また、ミールワームを飼育する工程で出るフンが水や空気を浄化する活性炭として利用できることを発見。商品化にむけて研究が進められています。
ミールワーム粉末を安定的に生産
DNPと愛媛大学は、ミールワーム(チャイロコメノゴミムシダマシの幼虫)の飼育を自動化する原理試作機を開発。2024年9月20日より同大学内の実験室で稼働を開始しています。

ラボプラント(生産プラント前のパイロットプラント)は、愛媛大学樽味キャンパス内に設置。
ミールワームの生産から加工まで一貫したプロセスが実現可能な施設・体制が構築されていること、飼育・研究室と加工室の2部屋合計で100平方メートルの広いスペースを運用していることが特長だといいます。
昆虫のフンによる活性炭の特長
DNPと愛媛大学は、ミールワーム飼育の自動化を目指す過程で、飼育工程の副産物であるフンが最終製品であるミールワーム粉末の約9倍(乾燥重量比)も出ることを把握。

この大量のフンを従来の農作物の肥料以外に有効活用できないかを検討した結果、吸着性が高く、空気や水を綺麗にするフィルターとして用いられている活性炭へと変換できることを発見しました。
今回開発された活性炭の浄化効果
今回、開発された活性炭はミールワームのフンを炭化などの処理をして得られたものだそう。
一般的な水処理などで用いられるヤシガラ活性炭と比較すると、粒子サイズが均一かつ細かいことから、吸着効率が高くなることが期待されています。

今後、空気中の有害物質の除去や水質浄化に向けた検証を進めるとのことで、環境保護への一助となることが期待されています。
2028年以降は年間1200トンの生産を目指す
DNPと愛媛大学は今後、飼育工場を立ち上げ、2028年度以降に商業用プラントで年間1200トンの生産を目指しているようです。
養殖魚のエサである魚粉は、天然資源を利用していることから生態系への悪影響が指摘されている中、今後、ミールワーム粉末による養殖が注目されていくかもしれませんね。
(サカナト編集部)