北海道の隠れた名産「ハナサキガニ」の漁が7月、根室で解禁されました。
タラバガニやズワイガニと比較するとマイナーなカニですが、美味しいことから人気があります。
この記事ではハナサキガニについてご紹介します。
ハナサキガニとは
ハナサキガニはタラバガニ科タラバガニ属に分類される大型の甲殻類。背面は赤褐色なのに対して腹面は白色で、体と足には無数の棘があることが本種の特徴です。
カニはハサミを含めて足が10本ありますが、ハナサキガニは足が8本しかないことからヤドカリに近い仲間とされています。
タラバガニ科には本種の他にタラバガニ、アブラガニ、エゾイバラガニ(ミルクガニ)等の大型甲殻類が属しており、食用になる種も少なくありません。
ハナサキガニも例外ではなく、北海道の一部の地域では本種を狙ったカニかご漁が春から夏にかけて行われており、タラバガニと比較すると流通量は少ないものの安価で手に入れることが可能です。
ハナサキガニの名前の由来は加熱すると鮮やかな色になることが由来とされており、漢字で「花咲蟹」と書きます。また、ごく稀に色素を欠いた青いハナサキガニも発見されているようです。
比較的浅い場所に生息するタラバガニ科
ハナサキガニの特徴は分布域にも見られます。本種の分布域はタラバガニ科の中では狭く、国内では主に北海道の襟裳岬~根室地方に分布、国外ではベーリング海などに生息するようです。
また、タラバガニ科の中では珍しく沿岸性が強いことが知られており、水深100メートル以浅に生息。成長するにしたがって深場へ移動し、甲長が5ミリから5センチのステージでは非常に浅い場所で暮らします。
食性は雑食性であり、胃の中からは昆布などの海藻類をはじめ、多毛類や甲殻類、棘皮類が見つかります。
ハナサキガニを使った郷土料理「鉄砲汁」
国内では北海道の一部に分布するハナサキガニですが、根室地方では古くから本種を狙ったかに籠漁が行われており、毎年、ハナサキガニの季節になると根室では「根室かに祭り」が行われます。
根室の郷土料理である「鉄砲汁」は本種を使った料理で、シンプルな味付けながら味わい深いカニの風味が特徴です。鉄砲汁という変わった名前は箸でカニの足をつつく様子が鉄砲に弾を込める動作に似ることが由来だとか。
そんなハナサキガニですが、戦前は6,000トンもの漁獲があったものの、その後は漁獲量が年々減少。1981年からの3年間はカニ籠漁が禁漁になりました。現代も漁獲量は多いとは言えず、稚カニの放流などの資源回復を図った取り組みが行われています。
タラバガニやズワイガニと比較すると流通量の少ないハナサキガニは分布域も狭く、漁期も短いレアなカニなのでした。郷土料理である鉄砲汁はもちろんのこと普通に茹でても美味しいので見かけたら是非食べてみてはいかがでしょうか?
(サカナト編集部)