近年、マッチングアプリや街コンなどが急速に普及し、恋愛の形は多様化しています。魚の世界でも、より多くの子孫を残すために、求愛行動や繁殖方法は種によって様々です。
この記事では、魚たちの多様な求愛方法について紹介します。
産卵床を整えてアピールする魚
奄美大島の海底に、毎年4月~7月頃に不思議なミステリーサークルが現れることが20年ほど前から知られています。実はこのミステリーサークルは、2014年に新種記載されたアマミホシゾラフグがつくっているということがわかりました。
2015年には、国際生物種探査研究所が実施している「世界の新種トップ10」に選ばれたアマミホシゾラフグですが、フグ目フグ科の魚で、体にある斑点模様が由来となっています。名前に「アマミ」とつきますが、奄美大島の固有種ではなく、沖縄県にも生息します。
アマミホシゾラフグは、繁殖期にオスが海底の砂地に直径2メートルほどの産卵床をつくります。尾ビレと腹部をつかって溝を作り、砂地に幾何学模様を描きます。
これがミステリーサークルの正体です。このミステリーサークルを使ってメスにアピールしているといわれています。
アマミホシゾラフグほどの大がかりな産卵床ではありませんが、ハゼ科の仲間もオスが産卵床を用意し、メスにアピールします。卵を産むメスたちにとっては、産み付ける環境が整っているかということが重要なポイントなのかもしれません。
メスが積極的な魚
魚の求愛行動では、オスからメスへアピールすることがほとんどです。
しかし、一部の魚ではメスが求愛に積極的な種もいます。テンジクダイの仲間では、オスが口の中で卵を守る行動が有名ですが、求愛においてはメスが積極的です。
お腹に卵を抱えたメスはオスと寄り添って泳ぎ、メスは自分の体をオスに寄せてアピールし、オスが口を開けると口の中に卵を産み付けます。
ジャンプで求愛アピールする魚
ムツゴロウは、体長20センチ程の大きさになるスズキ目ハゼ科の魚です。産卵期は5月~8月で、オスが泥上でジャンプを繰り返し、メスに求愛アピールをして巣穴に誘います。
求愛に成功するとメスはオスのつくった巣穴に戻り、巣穴の産卵室の天井に卵を産み付けることが知られています。
産卵後はオスが卵が水没しないように、空気を送り込みます。
このように、オスが卵を守ったり、卵の世話をしたりする種は魚では意外と多く知られており、クマノミやタツノオトシゴの仲間も有名です。
究極の愛?メスとオスが一体化する魚
チョウチンアンコウといえば、その名の由来となっている通り頭から提灯(発光器官)をぶらさげた姿形が特徴的な魚。チョウチンアンコウはアンコウ目チョウチンアンコウ科の魚で、水深200~800メートルに生息する深海魚です。
そんなチョウチンアンコウですが、かつてはオスが全く見つからなかったと言われています。メスは体長40~50センチほどあるのに対し、オスはわずか5センチほどにしかならず、メスとは異なる形態をしているためです。
さらに、チョウチンアンコウの繁殖方法は驚愕です。光の届かない深海に生息しているチョウチンアンコウは、異性に出会うとオスはメスに噛みつき、少しずつメスの体内に吸収されて、最終的にはなんとメスと一体化されてしまいます。
魚たちの求愛行動は私たち人間以上に多様かもしれません。人間社会でもより一層多様性が認められるようになるといいですね。
(サカナト編集部)