球状緑藻のボルボックスは世界で26種、日本では11種ほどが知られており、国内に生息するうちの4種は固有種と考えられています。
大阪工業大学の松﨑令講師らの研究グループは2024年、法政大学市ケ谷キャンパス近隣の外濠からサガミボルボックスに同定される緑藻を採取しました。
しかし、このサガミボルボックスは、形態的な特徴から他のボルボックスと明瞭な差があるとされていた一方、遺伝的特徴からフェリスボルボックスと酷似しており、新種記載には至っていませんでした。
そうした中で、同研究グループは本州の14地点から得られたサガミボルボックスとフェリスボルボックスを対象に形態的・遺伝的な比較を実施。サガミボルボックスが独立種であることを明らかにしました。
緑の真珠「ボルボックス」
ボルボックス Volbox (和名:オオヒゲマワリ)は、淡水に生息する球状緑藻です。
ボルボックスのイメージ(提供:PhotoAC)この緑藻は多数の細胞が集まって1つの体を作る群体であり、緑色の美しい球体は「緑の真珠」とも称されています。
また、ボルボックスは世界で約26種、日本では11種が報告されており、日本産11種のうち4種は日本固有種と考えられているようです。
近年では、2024年に琵琶湖から発見されたボルボックスが新種として記載され、Volvox biwakoensis (ボルボックス・ビワコエンシス)と命名されました。
明治時代以来の発見
Volvox biwakoensis が新種記載された同年、大阪工業大学の松﨑令講師らの研究グループは、法政大学市ヶ谷キャンパスの近隣に流れる外濠(そとぼり)からサガミボルボックスに同定される緑藻を発見しています。
市ヶ谷の外濠(提供:PhotoAC)これは当時、東京都においては明治時代以来、なんと約128年ぶりとなるボルボックスの発見となりました。
サガミボルボックス Volvox sp. Sagami は、これまでに相模湖や津久井湖など、関東の淡水域から発見されていたボルボックスです。
しかし、サガミボルボックは他のボルボックスと形態的に明瞭な差が認められていた一方、近縁種であるフェリスボルボックス Volvox ferrisii とDNAの配列が酷似することから新種記載には至っていませんでした。
各地の株を対象に形態的・遺伝的比較
今回の研究では、本州の淡水域14地点から得られたサガミボルボックスとフェリスボルボックス、それぞれ10株を対象に形態的、遺伝的な比較が行われました。
相模湖(提供:PhotoAC)その結果、形態的な比較ではサガミボルボックスの接合子の数や大きさ、棘の長さがフェリスボルボックスと異なることが明らかになっています。また、遺伝的な比較では、複数の核ゲノム領域解析が行われ、両者に遺伝的交流がないことが認められました。
これらの結果から、サガミボルボックはフェリスボルボックスから生殖的に隔離されているとされ、Volvox sagami として新種記載されました。種小名の”sagami”は本種が最初に記録された相模湖を含む相模(旧国名)に因んでいます。
今後も様々な淡水域での調査が期待される
今回の研究によって、日本固のサガミボルボックスが独立種であることが判明し、Volvox sagami として新種記載されました。
今後も、様々な淡水域を調査することでボルボックスへの理解が深まることが期待されています。
今回の研究成果は「Phycologia」に掲載されています(論文タイトル:Molecular and morphological delineations of two homothallic monoicous species, Volvox sagami sp. nov. and V. ferrisii (Volvocales, Chlorophyceae) in Japan)。
(サカナト編集部)