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青森県・陸奥湾における<ヨウジウオ>の配偶システムが明らかに 最大で9個体のメスと配偶?

ヨウジウオ科の魚はオスの育児嚢にメスが卵を産み、オスが卵を保護する生態が知られています。

ヨウジウオは東アジアに広く分布するヨウジウオ科の1種。本種は地域によって配偶システムが違う可能性が指摘されてきました。しかし、メスが何個体のオスと配偶するのかは調査されておらず、ヨウジウオが一夫多妻なのか乱婚なのかは謎に包まれていました。

こうした中で、弘前大学大学院の遠藤赳寛氏と曽我部篤准教授の研究グループは、青森県陸奥湾のヨウジウオを対象に配偶システムを調査。本種が乱婚型の配偶システムをもつことを明らかにしました。

この研究成果は『Journal of Fish Biology』に掲載されています(論文タイトル:The Pacific seaweed pipefish Syngnathus schlegeli exhibits exceptionally high levels of polygynandry among fishes with paternal egg care)。

オスが育児嚢で卵を保護する魚

ヨウジウオ科の魚はオスの腹部もしくは尾部にある育児嚢と呼ばれる器官にメスが卵を産み付け、オスが孵化まで保護するといった生態を持ちます。

育児嚢では卵の保護だけでなく、栄養や酸素の供給も行われることから、オスの卵保護は妊娠に例えられることもあります。

ヨウジウオ科の魚(提供:PhotoAC)

このような特殊な子育てを行うヨウジウオ科の魚ですが、その中でも一夫一妻から乱婚まで多様な配偶システムが知られています。また、種内においても配偶システムが時空間的に変化するようです。

こうした生態を持つことから、ヨウジウオ科の魚は配偶システムの進化的・生態学的要因を解明する良い研究対象とされています。

ヨウジウオは一夫多妻?乱婚?

ヨウジウオ科の1種であるヨウジウオ Syngnathus schlegeli は日本を含む東アジアに広く分布する種です。

本種は、中国の斎堂島の個体群を対象にして行われた研究で、1個体のオスが平均4.3個体のメスと配偶することが、遺伝解析で明らかになっています。

陸奥湾(提供:PhotoAC)

しかし、メスが何個体のオスと配偶するのかわかっておらず、本種が一夫多妻なのか乱婚なのか謎に包まれていたのです。

こうした中で、弘前大学大学院の遠藤赳寛氏と曽我部篤准教授の研究グループは、青森県陸奥湾のヨウジウオを対象に、マイクロサテライトDNAマーカーを用いた親子判定を行い、配偶システムを調査しました。

最大9個体のメスと配偶

この研究では、13個体のオスと20個体のメスが採集され、このうち十分に発達した卵を保護していた10個体を対象に、育児嚢内の卵がどのメスに由来するのか調べられています。

調査の結果では、オスの育児嚢には942~1729個の卵が入っており、オスは平均5個体(3~9個体)のメスの卵を受け取っていることが判明。さらに、同じメスに由来する卵が異なる2個体のオスの育児嚢から発見されるといった例が4例確認されています。

これにより、陸奥湾のヨウジウオはオスもメスも複数の相手と配偶する、乱婚型の配偶システムを持っていることが明らかになったのです。

また、オスが最大9個体ものメスと配偶していたことは、一回の卵保護期間中の配偶者数としては、これまで報告されているヨウジウオ科の魚の中で最多。これは研究グループが把握している限り、父親が卵を保護する魚類の中で最多の記録とのことです。

多くのメスと配偶するのはなぜ

陸奥湾のヨウジウオは、なぜこれほど多くのメスと配偶するのでしょうか。

1つの可能性としてオスが一度に保護できる卵の数と、メスが一度に産むことができる卵の数の違いが挙げられています。

1個体のメスだけでは育児嚢を満たせない

今回の研究で対象となった陸奥湾のヨウジウオはオスがメスよりも大型で、大きな育児嚢を持っています。

また、研究の対象になったオスでは育児嚢が複数のメスの卵で満たされていました。こうしたことから、1個体のメスだけではオスの育児嚢を満たすだけの卵を提供できず、オスが複数のメスと配偶する必要がある可能性が考えられています。

しかし、3~4個体のメスとの配偶で育児嚢を満たしている個体もいることから、最大9個体のメスと配偶する理由を完全に説明することはできないとし、さらなる研究が必要とのことです。

高緯度の個体ほど待遇者の数も増加?

さらに、陸奥湾の個体群と斎堂島の個体群の比較では、陸奥湾のオスのほうが斎堂島のオスよりも大型かつ多くの卵を保護することが分かっています。

ヨウジウオ属の他種では、高緯度の個体ほど体が大型になり、オスが保護する卵の数や配偶者の数が増加する例が知られているようです。今回の陸奥湾の個体群と斎堂島の個体群の地域差も、このパターンに類似しています。

しかし、現時点で調べられているのは陸奥湾と斎堂島の2個体群のみ。そのため、緯度に沿って配偶システムが変化していると結論付けることはできないといいます。

他の地域の個体群も調査が必要

今回の研究によって、陸奥湾のヨウジウオが乱婚型の配偶システムを持つこと、オスが平均で5個体、最大で9個体ものメスと配偶することが明らかになりました。

また、陸奥湾と斎堂島の2個体群を比較した結果では、陸奥湾のヨウジウオの方が体のサイズが大きく、保護する卵の数も配偶者の数も多いことが判明しています。これは生活史形質や配偶システムに地理的な変異が存在するとを示すものです。

今後、様々な地域の個体群を比較することで、なぜ同種なのに配偶者システムが異なるのか、この違いに体のサイズや水温がどう関係しているのか、こられを明らかにすることが期待されています。

(サカナト編集部)

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