熱帯海域を中心に広く分布するヤリマンボウ。
本種は日本からも記録があり、青森県から沖縄県の各地で散発的に報告されています。岩手県においては、澤井(2020)で言及された1個体のみが知られていました。
そうした中で、マンボウなんでも博物館・海とくらしの史料館の澤井悦郎氏は、岩手県大船渡で漁獲されたヤリマンボウを新たに報告。この報告は岩手県における2例目のヤリマンボウの記録です。
この研究は『Nature of Kagoshima』に掲載されています(論文タイトル:岩手県2例目のヤリマンボウ)。
舵鰭が突出するヤリマンボウ
マンボウ科ヤリマンボウ属のヤリマンボウ Masturus lanceolatus は熱帯海域を中心に世界の海洋に広く分布する大型魚です。
本種は同科のマンボウ属に似ることからよく混同されるものの、「舵鰭(かじびれ)突出部」と呼ばれる舵鰭中央よりやや背側が突出することから、区別することができます。なお舵鰭突出部は、短い個体もいれば長い個体もいるようです。
これについては、両者が遺伝的に同種であること、舵鰭突出部が成長に伴い短くなる傾向がある一方、稀に大型個体でも舵鰭突出部が長いことから、種内変異や成長差が要因と考えられています。
日本におけるヤリマンボウの記録
熱帯海域を中心に世界に広く分布するヤリマンボウは、日本からも記録があるマンボウ科魚類です。
出現は稀であるものの、青森県から沖縄県まで散発的に記録されています。岩手県においては、澤井(2020)で言及された1個体のみが知られていました。
岩手県の定置網で漁獲された幼魚
今回、調査された標本は澤井氏が岩手県陸前高田市の鮮魚店から提供を受けたもので、採集データは2026年8月6日、岩手県大船渡市三陸町、定置網です。
標本は、舵鰭の中央よりやや背側が後方に突出することからヤリマンボウのに同定され、全長が16.5センチの幼魚と考えられています。
陸全高田市(提供:PhotoAC)日本近海におけるヤリマンボウ幼魚の出現は稀であり、確実な記録で東京都の大島、不確実な記録でも宮城県であり、今回の報告はヤリマンボウ幼魚の北限記録を更新するものとなりました。
ヤリマンボウ幼魚の群れが接岸していた可能性も
また研究では、標本を仕入れた鮮魚店が2026年8月8日にマンボウ科魚類を展示しているとことを、情報提供者によって撮影されていることがわかっています。
撮影された個体は、舵鰭の中央よりやや背側が後方に突出することからヤリマンボウに同定されています。
写真個体は推測された体サイズから幼魚と考えられ、漁獲時の海面水温が22~23度と、調査個体や先行研究で確認んされた出現水温とも一致。これにより、漁獲時にはヤリマンボウ幼魚の群れが岩手県の南海域に接岸していた可能性が示唆されたのです。
出現水温についてはさらなる研究が必要
今回の研究によって、岩手県2例目となるヤリマンボウが報告されました。この個体はヤリマンボウ幼魚の北限記録でもあります。
また、調査個体と同時期に漁獲されたと考えられる個体が出現した水温などから、漁獲時にヤリマンボウ幼魚が岩手県の南海域に接岸していた可能性が示されました。
一方、ヤリマンボウ幼魚の出現する水温帯は知見が不足していることから、さらなる研究が必要としています。
(サカナト編集部)