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アオブダイで食中毒 猛毒のパリトキシンを持つ

アオブダイの雌(撮影:椎名まさと)

アオブダイによる食中毒は古くは1953年から知られており、平成23年度では東京都内でも発生しています(東京都保健所発表資料より)。

アオブダイは内臓(とくに肝臓)や筋肉に猛毒のパリトキシンを有していることがあり、1995年9月までに55人が中毒を起こし、うち5人が死亡しています(野口玉雄「フグはなぜ毒をもつのか」日本放送出版協会,1996年)。アオブダイの毒はパリトキシンという毒で腔腸動物の一種スナギンチャク類から分離された猛毒ですが、食物連鎖により毒化するとされています。

パリトキシンはアオブダイのほか、オウギガニ科のカニやハコフグ科魚類からも検出、中毒例があります。現在厚生労働省や各都道府県などではアオブダイを食さないようにと注意を呼びかけています。そのため市場や魚屋さんでは販売されません(写真の個体は愛媛県宇和島市の魚屋さんで購入したものですが……)。

食用のブダイも内臓は食さないように

アオブダイはパリトキシンを有することがあるとして食べないよう呼びかけられていますが、ほかのブダイでも似たような食性(藻類や付着生物を捕食する)を有しており、アオブダイ以外のブダイ科魚類も毒化する可能性があります。

特に内臓に毒が蓄積されるおそれがあるため、食用として販売されているブダイであっても、内臓は食べないようにします。

沖縄の市場で購入したオオモンハゲブダイ。食用種でも内臓は毒化する可能性も(撮影:椎名まさと)

ニザダイ科・キンチャクダイ科・カワハギ科の魚でも毒の蓄積の可能性

またアオブダイに限らず、ニザダイ科の魚やキンチャクダイ科の魚、カワハギ科の魚なども毒が蓄積される可能性がありますので注意が必要です。従来はブダイ科魚類は肝臓も刺身と和え物にして食したと聞きますが、さすがに今はなさそうです。

このほか、パリトキシンとは異なる中毒事例ですが、仏領ポリネシアのガンビエ諸島などではナンヨウブダイによる食中毒が知られています。その毒成分は「スカリトキシン」と呼ばれるものです。これは一般的なシガテラ毒と似たような症状があるほか、5~10日後に平衡喪失や歩行失調、ふるえなどの「第二段階」の中毒症状がおこり、この症状は2~3週間持続するといいます(上記「フグはなぜ毒をもつのか」より)。

他の地域でもブダイの仲間によるシガテラ毒の記録がありますが、沖縄県ではシガテラ毒の事例が1件あるのみとされます(下瀬 環著「沖縄さかな図鑑」、沖縄タイムズ社、2021年)。

沖縄の青いブダイは「アオブダイ」ではない!

沖縄に生息する青いブダイは、数々の中毒を引き起こしたアオブダイではなく、また別の種類となります。

しかしながら沖縄で食用とされているブダイ科魚類であっても、内臓は食しないほうがよいでしょう。

(サカナトライター:椎名まさと)

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椎名まさと

魚類の採集も飼育も食することも大好きな30代。関東地方に居住していますが過去様々な場所に居住。特に好きな魚はウツボ科、カエルウオ族、ハゼ科、スズメダイ科、テンジクダイ科、ナマズ類。研究テーマは魚類耳石と底曳網漁業。

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