沖縄県ではパヤオと呼ばれる人工物を使った漁業が行われているのをご存知でしょうか?
この記事では昭和に日本へ導入されたパヤオについてご紹介します。
パヤオとは
パヤオとは人工の浮魚礁のことで、浮体と海底に設置されたアンカーがチェーンやロープで繋がれた構造をしています。一口にパヤオといってもいくつかの種類があり、「表層型浮魚礁」「中層型浮魚礁」「浮沈式浮魚礁」などあるようです。
人工魚礁をパヤオと呼ぶのはフィリピンで流木などを意味する“payao”が由来になっているからだそう。
沖縄県などでは魚が漂流物に集まる習性を利用したパヤオ漁が行われており、主にマグロ類を漁獲しています。
なお、パヤオにはマグロ類の他にサメ類やシイラ、クロカジキ、ハタ類、クサヤモロ、アミモンガラ、夜間にはメカジキなどが集まることがあるようです。
沖縄県のパヤオ漁
前述の通り、パヤオ漁は沖縄の重要な漁業の一つで、現在もマグロ類がパヤオ漁によって漁獲されています。
そんなパヤオ漁が沖縄県に導入されたのは1982年頃のこと。宮古島周辺海域と八重山諸島海域で試験的に設置したパヤオが大きな効果を現しパヤオは県内各地に広がります。昭和60年度末には沖縄県の漁協のおよそ8割がパヤオを設置しました。
1961年にはパヤオ漁の漁獲量が2000トンを超え、1989年には3000トンを超えます。現在でも沖縄県には数多くのパヤオが設置されており、2022年5月のパヤオによる県内の漁獲量は373.3トンでした。
また、パヤオが初めて設置された1982年から25年後の2007年には“パヤオ”に因んで8月8日がパヤオの日に制定されており、宮古島ではパヤオ祭りも開催されています。
パヤオに魚が集まる理由 実は不明?
パヤオは日本のみならずフィリピンやインドネシアなどの国でも利用されていますが、なぜパヤオに魚が集まるのかは不明とされています。
正確な理由は不明とされているものの様々な説が存在。「パヤオに小さな生物が集まり、次いで小さな魚が集まり、最終的に大型魚が魚を狙いに集まる説」、「魚がパヤオの影を利用している説」、「パヤオから音が出ているから説」等、様々な理由が推測されています。
しかし、パヤオで漁獲されるカツオ、小シビ(マグロの幼魚)の胃はほぼ空の状態に近いことが知られてる他、マグロはパヤオに付く餌に依存していないことが明らかになっています。パヤオを離れて索餌することが知られており、摂餌のために集まるとは考えにくいという指摘もあるとか。
一方、カジキはカツオや小シビを餌として利用することから、パヤオに集まる理由は摂餌のためだと考えられています。
現在、パヤオ漁は熱帯を中心に多くの地域で導入されている漁法です。魚を効率的に漁獲できるだけではなく沿岸部の漁獲圧を分散させる役割も果たしているとも言われています。
流出や故障などのトラブルも少なくないようですが、今後は技術が向上し、より効率的に魚が獲れるようになるかもしれませんね。
(サカナト編集部)
参考文献
(与那国島のパヤオにおけるマグロ類の行動Ⅱ (パヤオ周辺でのマグロ類の餌料環境調査)-沖縄県公式ホームページ)