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アカハライモリはなぜエサを“空振り”するのか? <野生下で生き残れる理由>を考察してみた

わが家のアカハライモリ(以下イモリ)はエサを食べ終わるまで最低でも10分はかかります。

首をかしげながらピンセットとの距離を測っている姿は、なんとも言えないくらいに可愛いです。

ピンセットを使ってアカムシをあげていますが、なぜか何度も“空振り”します。野生では一体どうやって生活しているんだろうと不思議になるほどです。

「もう少しスムーズに食べてほしいな」「エサ入れに置いたら食べてくれないかな?」と考えましたが、その“空振り”にはイモリの進化の理由があったのです。

目の前のエサに10分 イモリはなぜ空振りするのか?

アカムシを挟んだ、または載せたピンセットを持つ手を支えて、イモリが食べるまで耐えている飼い主さんは多いのではないでしょうか。筆者もその一人です。

ピンセットにエサを見つけた瞬間。ピンセットをじっと見つめる。(提供:高良あさひ)

実際に、わが家のイモリに対して4回に分けてエサを与え、エサを発見してから食べるまでの時間を測ってみました。

空振りは最多で7回

わが家のイモリが餌を食べるまでの行動は、大きく分けて5つのシーンに分けられます。

(1)ピンセットを発見し、腹を見せて威嚇。(2)ピンセットにアカムシを発見し、隠れ家から出てきて凝視。(3)ピンセットの先を追いかけて距離を測りつつ、ニオイでエサだと確認。(4)鼻先をギリギリまで近づける。(5)アカムシを捕食、または空振りをして観察からやり直す。

これらの捕食行動を計測した結果、最終的に捕食に成功するまでの時間は約2分前後で、空振りは平均4.5回(最多7回)となりました。

1回の食事、すなわち4回目の捕食に成功するまで10分ほどかかりました。

動くものに強い? イモリの狩りの戦略

イモリの視力は細かい形を見分けるよりも、動くものの変化を捉えることが得意だと考えられています。

何度も角度を変えながらエサとの距離を慎重に図っている様子(提供:高良あさひ)

イモリの目は比較的顔の側方についているため、人間のように両目で精密な距離を測ることは得意ではないと考えられているようです。目で見た物の形を細かく認識するというより、動きや明暗の変化に強く反応している可能性があります。

わが家のイモリが空振りする理由も、こういった性質に起因しているのかもしれません。

「待つ」ことが生存戦略!野生下でイモリが生きていける理由

飼育下でエサを何度も空振りする姿は愛らしく見える反面、「野生でやっていけるのか?」といらない心配をしたくなります。

しかし、空振りが多くても野生で生きていけるのには、飼育下では見えにくい3つの理由があると筆者は考えています。

獲物が素早くない

1つ目は主な獲物の動きが素早いわけではないことです。

イモリが主に食べるのは、水生昆虫の幼虫などの小型の生物やミミズ、ときには同種の卵などとされています。

化学感覚で存在を探り、動きを捉えて捕食するスタイルでも十分成立しているようです。

化学感覚

2つ目は、味覚(化学感覚)がメインであるということです。

イモリの最も重要な感覚は、視覚よりも「化学感覚(ニオイなど水中の化学物質を感知する能力)」だと考えられています。

空振りをしても、口周辺の化学受容器などを使って獲物の存在を察知していると考えられています。一度で食べられなくても、ニオイを辿って何度も接触を試みるので最終的に食べられているのです。

低燃費な暮らし

3つ目は究極の低燃費です。イモリは変温動物で、毎日ガツガツ食べる必要がありません。

素早く動いて獲物を見つけるよりも、「死なない程度に動かない」ことでエネルギー消費を極力抑えています。この「テキトーさ」こそが、成功の秘訣です。

じれったさも愛おしい!イモリの時間軸で生きる飼育の極意

イモリのゆったりとした動きは、どれをとっても可愛く愛しいです。

エサを空振りする姿も、エサをじっと観察して首をかしげる瞬間も、こちらの時間に余裕がないと味わえません。どこか憎めないどんくささが、省エネで生活するためであったとは思いもしませんでした。

空振りを繰り返してやっと食べられた瞬間(提供:PhotoAC)

これからもイモリのように、ゆったりした気持ちで飼育しながら観察していきたいです。

(サカナトライター:高良あさひ)

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