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一度は絶滅した魚<クニマス>を追い求めて──山梨県・西湖「クニマス展示館」に行ってみた

一度は絶滅していたと思われていた生き物が「実は生きていた!」と言われたら、とてもワクワクしませんか?

つい最近、「実は生きていた!」という魚がいます。それが、クニマスです。

【画像】<クニマス>の産卵行動

当時「タレントのさかなクンが再発見した」ということで話題になったので、聞き覚えのある方もいると思います。

自然観察が好きな筆者は、クニマスと祖先を同じとする魚ヒメマスの自然下観察を通して、クニマスにも興味が湧きました。そこで、現在もクニマスが生き残る山梨県の西湖と、そのほとりにある「クニマス展示館」を訪れました。

一度絶滅した魚「クニマス」

クニマスは世界で秋田県の田沢湖だけに生息していた魚です。現在は湖の酸性化により、田沢湖のクニマスは絶滅しています。

移植先のひとつである山梨県の西湖に偶然生き残っていたことが、2010年12月14日に京都大学の中坊徹次名誉教授により発表されました。

山梨県西湖(撮影:みのり)

クニマスはベニザケという魚の陸封型にあたります。陸封型とは、本来海に下って成長する魚が、環境の変化などによって海に下らず、生涯を淡水域(川や湖)で過ごすようになったものです。

ヒメマスという魚もベニザケの陸封型ですが、クニマスの方がヒメマスよりも陸封された時期が古いようです。祖先を同じとする両者はそれぞれ別の道を辿って現在まで至っています。

ヒメマス(撮影:みのり)

クニマスの一番の特徴は、深い湖底で産卵をすること。河川におけるサケの遡上はもちろん、同じ陸封型のヒメマスでさえ、浅い湖畔で産卵をします。一方のクニマスは、水深40〜200mの深い湖底で産卵するのです。

ヒメマスとクニマスは外見が酷似しており、同じ魚にも見えますが、こうした生態的な大きな違いがあるのです。

クニマスに関しては、中坊氏の著書『絶滅魚クニマスの発見―私たちは「この種」から何を学ぶか―』(新潮社)に詳しく書いてあります。興味のある方はぜひ読んでみてください。

「さかなクンが再発見した」は誤解?

クニマスを調べると「さかなクンが再発見した」という記事などが出てきますが、実際には少し違います。

中坊氏がさかなクンにクニマスのイラストを依頼した際、ヒメマスがクニマスと似ているため、ヒメマスを取り寄せてイラストの参考にするよう助言しました。

しかし、この話をした時は真冬の2月であり、この時期にヒメマスを獲っているところはどこにもなかったといいます。そうした中で唯一応えてくれたのが、偶然にも西湖だったそうです。

その後、「ヒメマス」としてさかなクンが中坊先生のもとに届けたその魚は、研究によりクニマスだと証明されたのです。

「さかなクンが見つけて、中坊氏に鑑定を依頼した」とする記事も出てきますが、実際は中坊氏がさかなクンにイラストを依頼したところから発展し、細い糸を辿って偶然やってきたということのようです。

つまり、発見のきっかけはさかなクンであり、研究し論文として発表することでクニマスを“再発見した”と証明したのは中坊氏という理解が正しいでしょう。

クニマスが見てみたい!

前述の中坊氏の著書を読んだことで、クニマスに興味が湧いてきた筆者。その当時、北海道にヒメマスを含めたサケマス類の観察旅をしていたため、私はヒメマスに“お熱”だったのです。

北海道・屈斜路湖で観察したヒメマス(撮影:みのり)

「せっかくヒメマスを見たのだから、クニマスも見てみたい!」

ヒメマス同様、本来はダイビングやシュノーケリングなどで直接クニマスを見たかったのですが、クニマスは厳重に資源管理・保護されており、かつ湖の深場に潜むクニマスに直接会うことは叶いませんでした。

生きたクニマスを展示する「クニマス展示館」へ

そんな時でも手軽に生き物を見れるのが、水族館や博物館です。西湖のほとりにある「クニマス展示館」では、貴重な生きたクニマスを常設展示しています。

クニマス展示館(撮影:みのり/撮影場所:クニマス展示館)

西湖のほとりにひっそり佇むクニマス展示館は、車でないと行きづらい場所にあります。とはいえ、その道中はとても走りやすい山道でした。

クニマス展示館ではパネルやシアター、標本などを通してクニマスを解説。またクニマスの他にも、西湖周辺に生息する生き物たちが展示されています。

少し変わった顔立ちのクニマス

念願のクニマスは、展示館の一番奥に展示されていました。

本や展示パネルに記されている通り、とても黒いその体色が目立ちます。パッと見ただけではヒメマスと見分けがつかず、遺伝子解析と幽門垂を見ることでしかヒメマスと区別できないそうです。

クニマス(提供:みのり/撮影場所:クニマス展示館)

「ようやくクニマスに会えた!」という感動と同時に、その顔つきに違和感をおぼえます。少し四角っぽくカクカクしているのです。

他の水族館で展示されているサケマス類の魚でも、顔がカクカクとしているのは見たことがありません。

少し顔が四角い?(撮影:みのり/撮影場所:クニマス展示館)

おそらく展示館のクニマスは人工下で繁殖した個体だと思われます。飼育下で飼育生物の形や体色が多少変化することはよくあることですが、このクニマスの変化は一体どういった理由からなのでしょうか。

顔つきに面白さを感じつつ、クニマスに会えた喜びを噛み締めました。

クニマス展示エリア(提供:みのり/撮影場所:クニマス展示館)

再び田沢湖へ帰れる日を祈って

クニマスは原産地から他の場所へ放流したこと、釣りなどを通して今も資源管理がなされていることなど、本来環境を破壊しかねない行為がクニマスの保全に繋がった稀有な例だと思います。

もちろん多くの場合で放流や乱獲は生態系を破壊してしまうため、クニマスの例で他の環境保全を同一視して語るべきではありません。

しかし西湖におけるクニマスの例は、現状生態系へ大きな影響を及ぼすことはなく、また漁業管理も徹底させることで、偶然にも域外保全になった事例であると考えられます。

あくまでも筆者個人の考えですが、クニマスの保全活動と田沢湖の環境改善が進むことで、私たちが生きている間にクニマスたちが田沢湖へ帰れる日が来ることを願います。

(サカナトライター:みのり)

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みのり

みのり

センス・オブ・ワンダーを大切に

水族館に関するお話やフィールドワーク体験の記事を中心に、自然環境の素晴らしさやそれらを取り巻く文化的なお話もお伝えしていきます。

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