みなさんはアユモドキという魚を知っていますか?
アユモドキは国の特別天然記念物および国内希少野生動植物種に指定された珍しい魚です。
この記事では、絶滅危惧種になっている希少なアユモドキの岡山での保全活動について紹介します。
特別天然記念物「アユモドキ」とは?
アユモドキはどじょうの仲間ですが、形や色、泳ぐ姿がアユに似ていることから、この名前がつけられました。全長は15〜20センチほどで、7〜11本の美しい横縞模様があります。可愛いヒゲがあり、愛嬌のある顔の魚です。
河川や農業用水路、水田などに生息し、幼魚は主にプランクトンを、大きくなるとイトミミズや水生昆虫などを食べます。
アユモドキは、琵琶湖・淀川水系と岡山県の河川にのみ生息が確認されている日本固有種の淡水魚です(淀川水系では特に減少が顕著)。そのため、環境省の第4次レッドリストで絶滅危惧IA類(ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの)に定められています。
近畿大学では人工繁殖で、岡山県では保護活動と人工繁殖などで成果が得られており、絶滅の危機への待ったなしの対策が行われている状況です。
アユモドキが激減した理由は?
アユモドキは都市化にともなう河川の護岸改修工事や氾濫原(洪水時に河川の水が氾濫する低地のこと)の消失によって、生育に適した場所が減ったため激減したと考えられます。氾濫原は、増水時に水生動物の隠れ家となり繁殖に役立つといいます。
また、圃場整備事業等によって河川から水路や水田への隔絶が起きたために、親魚が産卵場である水田地帯へ移動できず、繁殖が困難になったことも大きな理由です。
その他、外来魚や鳥による捕食や観賞のために違法捕獲が行われていたことも理由に挙げられます。
アユモドキを守るための岡山での保全活動
岡山市東区でのアユモドキの保全活動は「瀬戸アユモドキを守る会(以後、守る会)」が中心となって実施。「守る会」には動植物に詳しい専門家が集まり、国に働き掛けて産卵場所のビオトープ「アユモドキの里」や、アユモドキに優しい護岸工事を整備しています。
「守る会」では、地域にある千種小学校での人工繁殖や人工飼育、外来魚の駆除や密猟者の取り締まりなども実施し、積極的な保全活動にも取り組んでいるといいます。千種小学校で繁殖させたアユモドキはキリンビール岡山工場のビオトープ池に放流され、屋外での人工繁殖についても2年連続で成功しました(アユモドキふ化 2年連続で成功 岡山「守る会」1センチまで成長ー山陽新聞ニュース)。
また、岡山市中区では高島地区でもNPO法人が積極的な保全活動を推進中です。
岡山のこれらの保全活動(生物多様性・アユモドキの保全活動ーおかやまSDGs・ESDなび)は、アユモドキ保全対策事業の参考にすべく、亀岡市から岡山市へ現地視察に来るほどの成果となっています。
筆者の実家はアユモドキの生息地のすぐそばにあるので、この活動にはとても共感を覚えます。将来にわたってアユモドキの絶滅を防ぐことができたら、本当に素晴らしいことです。
(サカナトライター:額田善之)