私たちの生活に欠かせない昆布。普段何気なく食べている昆布にも種類があることをご存知でしょうか?
中でも「鬼昆布」と呼ばれる昆布は高級品として知られています。
北海道は昆布の宝庫
日本には複数のコンブ類が分布しており、その多くが北海道を主産地としています。
北海道では古くから昆布を利用してきた歴史があり、アイヌの人々が昆布を取る様子が風景画として残っている他、江戸時代から明治時代に運航した北前船の物品として非常に有名です。また、昆布の名前の由来はアイヌ語のコンプが由来ともされています。
昆布は現代でも私たちの生活になくてはならない存在です。食用となるコンブ類は主にマコンブ、ナガコンブ(浜中昆布)、オニコンブ、リシリコンブ(利尻昆布)、ホソメコンブ、ミツイシコンブ(日高昆布)、ガゴメなどがあり、中でもオニコンブは高級昆布として知られています。
オニコンブの由来は?
オニコンブはコンブ科 Saccharina 属に分類される藻類で、DNAを用いた解析では稚内から釧路あたりまでに分布するとされました。
長さは1.5~3メートル程になり、幅は時に50センチにもなるとか。幅が広いことから「はばひろ」、「おおはばひろこんぶ」、「いたこんぶ」などの別名があります。これらのことから、あくまで推測ですが、オニコンブの名は本種の葉状部の幅が広いことに由来するのかもしれません。
なお、同じくコンブ科に属するガッカラコンブも地域によってオニコンブと呼ばれることもあるので混同しないように注意が必要です。
実は複雑な昆布の分類
昆布は私たちに身近な藻類のひとつですが、ではこの昆布を食用としてではなく、生物として見た時にどうなるでしょうか?
先程、ご紹介したマコンブ、リシリコンブ、ホソメコンブという藻類がいますが、実はいずれもオニコンブと同種であることが判明しています。コンブ類は形態的な特徴が乏しいことから分類が複雑である他、標準和名に対して流通上の名前が多く存在することから混乱の多いグループです。
そのため、DNAを用いた分類が有効とされており、近年のDNAを用いた解析では、従来別種として扱われていたマコンブ、リシリコンブ、ホソメコンブ、オニコンブの4種は地域変種であることが明らかになっています。
最高級のオニコンブは羅臼産
北海道の一部に分布するオニコンブは、非常に重要な水産資源とされ北海道では漁業対象とされています。
上質な出汁が出ることから「昆布の王様」とも呼ばれており、特に羅臼産のオニコンブは最上級で「らうすこんぶ」とも呼ばれています。羅臼市では本種を狙った漁業が7月下旬から8月下旬の約1ヶ月行われ、今年は7月23日から漁が始まりました(羅臼「コンブの王様」オニコンブ漁幕開け パスタ絡めるように採取-朝日新聞)。
オニコンブは「まっか」と呼ばれる特殊な漁具を使った伝統的な漁法で採取され、加工された後に全国へ出荷されます。
昆布の王様として知られるオニコンブは羅臼で採取される高級昆布なのでした。採取されたオニコンブは塩昆布、おぼろ昆布、とろろ昆布など様々な調理法で食べられているようです。皆さんも最高級の昆布を味わってみてはいかがでしょうか?
(サカナト編集部)
参考
(北海道コンブを世界に伝えるために / 四ツ倉 典滋-一般財団法人 海苔増殖振興会)
(日本産コンブ属植物4種(マコンブ, ホソメコンブ, リシリコンブ, オニコンブ)の分類学的再検討)