チンアナゴ亜科Heterocongrinae
チンアナゴ亜科の魚はアナゴ科の中でも特異な形態と習性を有しています。体はほかのアナゴ科魚類と比べ非常に細長く、胸鰭はあるものとないものがおり、同じ属の中でもあったりなかったりします。シンジュアナゴ属とチンアナゴ属の2属からなり、この2属は頭部の唇の遊離縁の形状などを見ることで見分けることができます。
日本には前者はニシキアナゴ、シンジュアナゴ、アキアナゴの3種、後者はチンアナゴ、ゼブラアナゴおよび近年日本から報告され新種記載されたニゲミズチンアナゴの3種、合計6種が知られています。
このほか、チンアナゴ属の Heteroconger taylori Castle et Randall, 1995 と思われるものが琉球列島などで写真撮影されています。代表的な種はチンアナゴ Heteroconger hassi(Klausewitz and Eibl-Eibesfeldt, 1959)や、ニシキアナゴ Gorgasia preclara Bohlke and Randall, 1981 がいます。
アナゴ科の生態
アナゴ科をはじめ、ウナギ目の魚はレプトセファルス(レプトケパルス、レプトケファルスなどとも呼称)期を経て成長することが知られています。春季にこのレプトセファルスが沿岸に出現し漁獲されます。このレプトセファルス期のものを漁師は「のれそれ」と呼称しています。
昼間、アナゴの仲間は多くが海底の穴の中に潜んでいます。「アナゴ」の名の由来は昼間は穴や泥底に潜り頭だけを出しているところから来ているとされます。夜間になると泳ぎだし、マアナゴの地方名のうち、富山県の「よねず」は「夜寝ず」の意、四国の「べえすけ」「べすけ」はともに「助平」に由来し、夜遊びが好きなことが理由とされており、習性にちなむ地方名が多いのも特徴的です。
アナゴ科の魚は肉食性が強く、甲殻類や小魚を捕食しています。ただ釣り餌としてはこれらの餌だけでなく、シログチ(イシモチ)狙いのアオイソメを餌にして釣れたこともあります。
筆者は夕方に水深がある港でアジを狙ってサビキ釣りをしていたところ、良型のマアナゴを釣ったこともあります。いずれにせよ、夜行性で昼間はほとんど釣れることはありません。
先述のように、アナゴ科魚類の中でももっとも特異な生態をしているといえるのがチンアナゴ亜科の魚です。これらの魚は体の大部分を砂の中にうずめ、そこから顔を出して動物性プランクトンを捕食するという習性があります。