漢字で「鮗」と書くことからも分かるように、冬に旬を迎える魚「コノシロ」。
千葉県船橋市は全国屈指のコノシロの水揚げ量を誇り、毎年2000トン前後の水揚げがあります。
コノシロは船橋の漁師にとって重要な収入源である一方、食用としての認知度が低く、魚のエサとしての利用がほとんどとなっています。
そうした状況を踏まえ、船橋市では地元企業や漁協と連携し、コノシロを使った商品開発やPRに取り組んでいます。
コノシロとは
コノシロはニシン目ニシン科に属する魚です。
本種は北海道~九州の沿岸に広く生息し、主に内湾、汽水域でよく見られます。
体高がやや高く、色が一様に銀色であることに加え、体側背面に黒点が並ぶことが特徴。同じニシン科のサッパやカタボシイワシによく似るものの、本種は背びれ後方の軟条が伸長することから容易に区別することができます。
また、「コノシロを食べる」ことを“この城を食べる”とも読むことができることから、武士が食べなかった魚の一つとされています。
成長すると単価が安くなる魚?
コノシロは出世魚として知られており、シンコ→コハダ→ナガズミ→コノシロと呼び名が変わります。ただし、標準和名はコノシロです。
成魚のコノシロは価格が安く、食用としての知名度が低い一方、コノシロの若魚であるコハダやシンコは寿司ネタの原料として重宝されています。特にシンコの価格は非常に高く、1キロあたり数万円の値が付くことも珍しくありません。
そのため、コノシロは成長すればするほど、価格が安くなるという不思議なことになっているのです。
船橋漁港は日本屈指の水揚げ量
コノシロは日本に広く分布する魚ですが、千葉県船橋市の船橋漁港では特に水揚げ量が多く、全体に占めるコノシロの割合は増加しています。
農林水産省などの統計調査では、令和4年のコノシロの水揚げ量は全国で3034トンですが、船橋市では1217トンの水揚げと、全国の水揚げの約4割を占めている状況です。
船橋市といえばスズキの産地としても有名ですが、近年はスズキを含む東京湾の漁獲量が減少。そのため、スズキの産卵期である冬場を禁漁とし、安定して獲れるコノシロを漁獲する漁業者もいるようです。
また、船橋市の中型まき網漁業ではスズキだけでなく、コノシロについても自主的な資源管理が行われています。コノシロの産卵・育成場である湾奥での漁獲の自粛のほか、抱卵・産卵期のコノシロの漁獲を可能な限り自粛しています。
漁協がコノシロをPR
一方、小骨が多く、成長すると骨が固くなることなどの理由からコノシロが食用として認知されておらず、ほんとどが魚のエサとして利用されているようです。
また、単価も低く、コハダの10分の1程度にとどまっています。
船橋市では、地元の水産会社がコノシロの消費量増加に取り組んでおり、2023年にはコノシロを高温圧力で調理した「コノシロやわらか煮」を開発。また、市内の小学校7校でコノシロを使ったメニューが給食に登場したほか、今年1月10日には船橋市の中学校で「コノシロのすり身揚げ」が提供されました。
ほかにも、船橋市は漁協と連携してコノシロのフライやつみれも開発しています。
コノシロを大衆魚に 漁師の収入増加に期待
食用としてほとんど流通していなかったコノシロですが、船橋市や漁協、地元企業の活動により徐々に利用が広がっているといいます。
今後、コノシロの消費が拡大することにより、船橋市で漁を行う漁師の収入増加が期待できるかもしれません。加えて、引き続き適切な資源管理が望まれます。
(サカナト編集部)