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資源回復には水位が重要? 琵琶湖固有種<ホンモロコ>の産卵環境が明らかに

琵琶湖を代表する魚「ホンモロコ」。

ホンモロコの産卵場所は1995年以降で減少しており、近年の研究では本種の産卵場所の選択は植物や流速など環境条件が関連している可能性が示されていましたが、定量的には明らかにされていませんでした。

そんななか、近畿大学大学院農学研究科などの研究グループは、琵琶湖のホンモロコが琵琶沿岸で産卵を行う際、ヤナギの根が繁茂した水深が浅く波当たりの良い場所を選択していることを科学的に解明しました。

この研究の結果は『Fisheries Science』に掲載されています(Spawning habitat selectivity of Honmoroko(Gnathopogon caerulescens)around the emergent vegetation zone of Lake Biwa, central Japan)。

個体数が減少したホンモロコ

ホンモロコは琵琶湖固有のコイ科タモロコ属の魚であり、コイ科の中でも最も美味しいとも言われています。

1995年以前は年間数百トンの漁獲がありましたが、それ以降は個体数が激減。現在は絶滅危惧種に指定されており、資源の回復が求められています。

ホンモロコ(提供:PhotoAC)

ホンモロコの産卵場所は、1995年まで琵琶湖の南部流域を含めたほぼ全沿岸域に分布。しかし、外来魚の影響や産卵繁殖場の減少、琵琶湖の水位操作などによる卵の干上がりが原因となり、減少しました。

最近の研究では、ホンモロコの産卵場所の選定には棲息する植物や流速など環境条件が関連している可能性がしめされているものの、定量的には明らかにされていなかったといいます。

ホンモロコの産卵場所の選択

近畿大学大学院農学研究科、滋賀県庁、京都大学フィールド科学の研究グループは2022年、ホンモロコの産卵盛期である5月に、産卵場所である琵琶湖沿岸の大津市と守山市の湖岸344カ所の調査区間を設定。区画内におけるホンモロコの卵の有無、水温や水深、沖から岸に向かう流速、岸からの距離、底質を測定を行いました。

琵琶湖(提供:PhotoAC)

測定の結果、ホンモロコの卵はヤナギ類の根によく見られ、特に水深が浅く、流れが速い場所で確認されたといいます。

一方、ヤナギ類の根がある場所でも流れが遅い場所では卵が確認されなかったことから、ホンモロコがヤナギ類の根のような産卵基質(植物や砂礫など魚が卵を産み付けるもの)が繁茂し、水深が浅く流れが速い場所を産卵場所として選択していることが示されたのです。

また、水流が遅い場所では卵に泥が付着しふ化率が低下しますが、流れが速く波当たりの場所では酸素が豊富に供給され、ふ化が高くなると考えられています。

資源回復には琵琶湖の水位が重要

これまで、琵琶湖沿岸のホンモロコの産卵場所は波打ち際のヤナギの根と定性的な知見に限られていましたが、今回の調査・解析はホンモロコの産卵場所の選択性について、科学的に明らかにした初めての研究となり、ホンモロコの産卵保護をするために非常に重要な知見となりました。

琵琶湖では5月~6月にかけて水位を低下させる操作を行いますが、この時期はホンモロコの産卵時期でもあるため、多くのホンモロコの卵が干上がってしまうことが確認されているようです。

しかし、今回の研究では少なくとも産卵時期の琵琶湖では水位を一定に保ち、産卵環境の波打ち際のヤナギ類の根を維持することが、ホンモロコの資源回復に重要であることが示唆されました。

今後はホンモロコの産卵に配慮した水位操作において、資源回復が望まれています。

(サカナト編集部)

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サカナト編集部

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サカナに特化したメディア『サカナト』。本とWebで同時創刊。魚をはじめとした水生生物の多様な魅力を発信していきます。

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